メディアには「女のカラダ」に関する都市伝説があふれています。
「あたためは生理痛にも妊活にも効く」「仕事をしすぎるとオス化する」「恋愛やセックスをしていないと女性ホルモンが枯渇する」……。これらはどれも、医学的には根拠のない情報。でも、それに振り回されて、不調のスパイラルに陥ったり、落ち込んだりする女性は少なくありません。
「女体」についての第一人者、産婦人科医の宋美玄先生が、いまの医学でわかっている「ほんとうのこと」だけをベースに20代~40代女性の、身体や性の悩みに答えた新刊「医者が教える女体大全」の中から、一部を抜粋して紹介いたします。(初出:2020年11月26日)
生理前の心身の不調は、すべて治療の対象です!
わけもなく気分がむしゃくしゃして、いつもは我慢している脂(あぶら)っこいものや甘いものをたくさん食べ、そのあとで急に気分が落ち込んだ……。その翌日に生理がきて「あ、これが原因だったか」と気づく。多くの女性が口をそろえて「わかる!」というのではないでしょうか。
生理の2週間前から数日前になると心身に変調をきたす現象は、PMS(PreMenstrual Syndrome=月経前症候群)といいます。
下腹部や乳房の張り、頭痛、倦怠感、食欲不振または過食、強烈な眠気、むくみなど、身体面に不調が出る人。どうしようもないほどイライラしたり、不安感に襲われて落ち込んだり、とメンタル面に不調が出る人。その合わせワザで悩んでいる人。症状はそれぞれですが、日常生活に支障をきたすこともあるので困りますね。
生理のある女性の70~80%にこの症状があるといわれており、クリニックにもたくさんの女性が相談に来ます。原因は、女性ホルモンの一種、プロゲステロンにあるといわれています。排卵後にプロゲステロンの分泌量が増えます。これを「黄体期」といい、不快な症状が出るのもこの時期です。ただ、なぜPMSが起きるのか、細かいメカニズムはいまだにわかっていません。
うつ状態になって自殺願望が出る人も
メンタル面への影響が特に大きく、感情のコントロールが難しくなる人もいます。極度のイラ立ちから身近な人を攻撃したり、うつ状態になって自殺願望が出たりすると、深刻です。こうなるとPMDD(PreMenstrual Dysphoric Disorder=月経前不快気分障害)という状態です。
生理が終われば治まるのですが、たびたび周りに迷惑をかけることから人間関係に悪影響を及ぼすこともあるので、そのままにしておかないほうがいいでしょう。PMS、PMDDともに治療の対象です。
日ごろからイライラすることが多い人はイラ立ちが強くなり、落ち込みがちな人はうつ状態になったりと、もともとの性格が関係するともいわれますが、ホルモンの影響なので、まずは自分を責めないようにしましょう。身近な人に話しておいて、理解を得ておくのもいいですね。それは決して恥ずかしいことではありません。
対処法はいろいろありますが、排卵自体をなくすので黄体期もなくなるピルがお勧めです。生理前だから仕方ないとあきらめないで試してみてください。ホルモンのアップダウンに振り回されなくなる人生は、とても快適です。心身ともに自分らしい、安定した状態で過ごすことができます。
「医者が教える女体大全」には、上記のような、女性ならではの不快さ、心配事をどのように解消すればよいかが、医学的に書かれています。ぜひ、参考にしてみてください。