メディアには「女のカラダ」に関する都市伝説があふれています。
「あたためは生理痛にも妊活にも効く」「仕事をしすぎるとオス化する」「恋愛やセックスをしていないと女性ホルモンが枯渇する」……。これらはどれも、医学的には根拠のない情報。でも、それに振り回されて、不調のスパイラルに陥ったり、落ち込んだりする女性は少なくありません。
「女体」についての第一人者、産婦人科医の宋美玄先生が、いまの医学でわかっている「ほんとうのこと」だけをベースに20代~40代女性の、身体や性の悩みに答えた新刊「医者が教える女体大全」の中から、一部を抜粋して紹介いたします。

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そもそも「子宮」は冷えない!

 生理痛は、悩んでいる人が多いぶん対策も人それぞれ。生理は病気ではないという理由から、知恵と工夫でなんとかしようと心がけている女性が多いですね。「カイロであたためる」「靴下を重ね、下半身を冷やさない」「冷えに効くツボを押す」「コットン製の布ナプキンを使う」……。子宮、そして身体をあたためれば生理痛が治まるという考えは、とても一般的です。生姜(しょうが)が生理痛に効くという説もよく見かけます。

 子宮をあたためるという“イメージ”は、どこからきたのでしょう。そもそも臓器とは、冷えるものなのでしょうか? 答えは「NO」です。冷たいものを一気にたくさん飲むと胃が冷えたように感じることはありますが、これもほんの一時的なものです。ずっと冷えっぱなしということはありません。

 そして身体の構造でいうと、子宮はもっとも中心部にあります。外気の影響を受けないうえに、周辺を太い血管が何本も通り、そこにはあたたかな血液が流れています。「心臓や肺の冷え」を心配したことがないのに、もっと中心にある子宮の冷えだけを心配するというのは、ちょっとおかしいですね。そもそも子宮の温度をはかること自体が不可能なのに、どうやって「冷えた」とわかるの……?

「紙ナプキンが子宮を冷やす」説もウソ

 使い捨ての紙ナプキンは子宮を冷やすという説を真に受けて布ナプキンを使って生理痛対策をするのも、残念ながら間違いです。布ナプキンはたしかに、デリケートゾーンに触れた瞬間はあたたかく感じます。ですが、経血を吸収して濡れるとむしろデリケートゾーンを冷やします。コットンの衣類を着けて汗をかいたあと、急に冷えて身震いした経験はありませんか? 汗の水分が蒸発するとき、周囲から熱を吸収する「気化熱」現象が起きるためです。布ナプキンでは表面が常に湿っているので、同じことが起こります。紙ナプキンは内部の吸収体が経血を閉じ込めて逃しません。

 生理痛でつらいとき下腹部や腰などをあたためると痛みがやわらぐことがありますが、それは冷えた子宮があたたまったからではありません。痛みの強さには個人差があり、それで対策できる人はいいでしょう。しかし、痛みが治まらない人がそれ以上あたためても何も解決しません。

痛みに対処したい時の方法は?

 では、生理痛をなんとかしたいときはどうすればいいのでしょう? 本書で説明している通り、ピルなどで生理そのものを軽くしたり止めたりすれば、痛みは軽減します。が、とにかく、いますぐ痛みに対処したいときのベストアンサーは「鎮痛剤を飲む」です。しかもできれば「痛くなるな」と思ったら飲む、これが大事です。

 ここからは「なぜ鎮痛剤なのか」についてお話しますが、それにはまず、生理痛とは「血が出るから痛い」という単純なものではないと知ってください。

 子宮では毎月、受精卵を受け止めるための子宮内膜が作られます。妊娠しないとその内膜はいらなくなるので、血液と一緒に体外に排出される─この現象が生理です。内膜が子宮からはがれるときに「プロスタグランジン」という物質が分泌されます。舌をかみそうな名前ですね。これが子宮を収縮させるので、痛みを感じます。

 だったら、そのプロスタグランジンが出るのを止めてしまえばいいのでは? そう思った方、正解です。鎮痛剤には、痛みのもととなる物質の生成をおさえる成分が含まれています。だからこそ、痛くなるのが分かっていたら、その前に飲むのです。「あ~、痛くなってきた」と思ってから鎮痛剤に手を伸ばすのでは、すでにプロスタグランジンは分泌されています。痛みを感じる時間はできるだけ短くしましょう。

「鎮痛剤は身体によくない」「だんだん効かなくなる」と、親世代からいわれた人もいるでしょう。それらはすべて、間違いです。医師や薬剤師の説明や市販薬の説明書などに書いてある範囲であれば、1日に何度飲んでも大丈夫です。

痛みの原因を病院で見極めることも大事

 薬局やドラッグストアでは、たくさんの種類の鎮痛剤が市販されています。けれど、そこで鎮痛剤を手に入れるだけでなく、まずは婦人科で診てもらってください。生理痛の裏にあるかもしれない病気の診断は、薬局ではできません。

 痛みの原因がわかれば、病院で治療法をいろいろ提示してもらえますし、鎮痛剤も処方してもらえます。漢方薬を勧めてくれる医師もいるでしょう。最終的には医師の判断による処方になりますが、もし希望があれば最初に伝えておくといいと思います。

「生理痛ぐらいで病院って大げさなのでは?」という心配は無用です。生理痛は、子宮内膜症という病気のサインかもしれません。この病気が原因で不妊になることはめずらしくありませんし、何度も手術する人もいます。「たかが生理痛で来たの?」などという医師はいないので安心してください。

医者が教える女体大全」では、多くの女性が間違った情報に振り回されている、女性ならではの不調や不快さについて、医学的に正しい解決策を提案しています。ぜひ、参考にしてみてください。