メディアには「女のカラダ」に関する都市伝説があふれています。
「あたためは生理痛にも妊活にも効く」「仕事をしすぎるとオス化する」「恋愛やセックスをしていないと女性ホルモンが枯渇する」……。これらはどれも、医学的には根拠のない情報。でも、それに振り回されて、不調のスパイラルに陥ったり、落ち込んだりする女性は少なくありません。
「女体」についての第一人者、産婦人科医の宋美玄先生が、いまの医学でわかっている「ほんとうのこと」だけをベースに20代~40代女性の、身体や性の悩みに答えた新刊「医者が教える女体大全」の中から、一部を抜粋して紹介いたします。
女性ホルモンを出すために「恋愛」するのは無意味
恋愛やセックスによって女性ホルモンが分泌されてきれいになる─私はメディアでこうした特集を見ると、ため息をつきたくなります。「ホルモンのためには、どのくらいの頻度でセックスすればいいですか」と真剣に聞かれたことは数知れず。恋愛がご無沙汰な自分に劣等感を抱いている女性もいます。
恋愛やセックスでは、感情が高ぶったり多幸感を覚えたりするので、そのときに「ホルモンが出ている!」と感じるのかもしれませんが、それは脳内ホルモンといわれるドーパミンやオキシトシンの仕業であって、女性ホルモンはまったくの無関係。これは裏を返せば、「恋愛やセックスをしなければ女性ホルモンが分泌されなくなり、容姿に響く」となる点が問題です。恋愛やセックスはとてもプライベートな行為。するもしないも、その人の自由。「ホルモンが出なくなるぞ」と脅すのは感心しません。
女性ホルモンは多ければ多いほどいいわけでもない
女性ホルモンは多いほどいいと思っていませんか? これもメディアの罪です。40代に訪れる更年期では、不調が出る人たちに対して女性ホルモンを補充する治療が一般的です。つまりホルモンを増やすのですが、補充方法によっては乳がんのリスクがわずかに上がることがわかっています。「女性ホルモンUP!」という文句には振り回されないようにしましょう。
女性ホルモンはその人の意志で増減できません。脳からの指令を受けて主に卵巣から分泌されるものなので、指令を出す側、受ける側、そしてその途中に何か阻害(そがい)するものがあれば、いくら「ちゃんと分泌して!」と願っても止まるのです。
イソフラボンという大豆に多く含まれる成分が女性ホルモンをアップさせると聞いて、熱心に大豆製品を食べている人も少なくありません。たしかに植物性のエストロゲンが摂(と)れることはありますが、その量はごくわずかです。それもすべての人が摂取できるわけでなく、「エクオール産生菌」といわれる腸内細菌を持っていない人は残念ながらいくら食べてもエストロゲンにはなりません。大豆製品をよく食べる日本人でも、エクオール産生菌を持っているのは2人に1人といわれています。
ホルモンについて実感したいのであれば、基礎体温表をつけてみましょう。高温期と低温期に分かれて、排卵しているようなら、あなたの身体はちゃんと機能しています。ホルモンも出ています。無理に自分を、恋愛、セックスに駆り立てなくてもいいのです。安心してください。