米国は「分断政府」となる可能性が高く、市場もそれを織り込んだ動きを見せている。ドル円の行方にどう影響するのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 米大統領選・議会選では、トランプ大統領の敗北宣言が行われず、上下両院で議席数が確定していないが、本稿執筆時点では、新大統領にバイデン氏が就任し、上院では共和党、下院では民主党が、それぞれ議席の過半数を確保する見込みである。この結果、米国は「ねじれ議会」(分断政府)となる可能性が高く、市場もそれを織り込んだ動きを見せている。

 以下では、米国の分断政府が主要通貨、新興国通貨に対する影響を、米景気、通商・外交関係、移民政策、環境・エネルギー政策などの政策領域別に整理する。各領域におけるインプリケーションを概観すると、一部の通貨は米分断政府の影響を相当程度織り込んだ一方で、ほとんど織り込んでいない通貨もあることが浮き彫りとなる。

分断政府が米景気に与える影響
統合政府ほどではないが回復へ

 米国で分断政府が誕生すると、民主党が掲げてきた大規模な追加経済支援策およびインフラ投資計画の一部が、上院でブロックされ得るため、民主党政権(統合政府)の場合と比べ、歳出規模が相対的に小さくなることは不可避だろう。新型コロナ感染再拡大を受けた経済活動制限の再導入も、米国景気の回復鈍化につながるだろう。

 もっとも、米分断政府により、民主党が掲げてきた各種増税案や規制強化の実現可能性も低下するため、米分断政府の誕生は、景気下押しリスクを後退させる要因となっている。また、共和党・民主党のどちらが勝っても、追加経済支援策は新型コロナ感染再拡大への対応策の延長という性格が強く、かつ両党とも必要性が高いと判断しているため、実現するとみられる。

 バイデン氏が主張してきた景気刺激策のコアであるインフラ投資も、規模の差こそあれ共和党も主張してきたものであることから、超党派のイニシアチブで実現する公算が大きい。新型コロナ感染再拡大は、追加経済支援策の合意機運を高め、規模の上振れ要因といえる。このため、米GDP成長率の回復経路は、民主党統合政府と比べて下振れるとしても、下振れ幅は小幅にとどまるだろう。

 米経済の力強い回復は、世界経済全般に好影響を与えるため、リスクオンとなりやすく、資源国通貨や新興国通貨の追い風となる。特に対米輸出依存度が高いカナダやメキシコの通貨は、米経済回復の恩恵を受けやすい。一方、資源国通貨や新興国通貨が上昇する対価として、ドルと円の下落圧力は高まるが、米経済が日本経済をアウトパフォームすることから、ドル高・円安圧力が高まるだろう。