『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が10万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏「著者の知識が圧倒的」独立研究者の山口周氏「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

【独学者のための読書案内】「身近なモノの歴史を知りたい」ときに便利で楽しい一冊Photo: Adobe Stock

[質問]
 身近な物の歴史が知りたいです

 この時代に電車が生まれた、この時代にはコンクリートの家が建ったなど、生活する上でお世話になっている物がいつの時代に生まれたか一覧になっているような本ってありますか?

知っている言葉を、百科事典で引くのが面白いです

[読書猿の解答]
 事物起源というジャンルがあって沢山の本があります。ベックマン『西洋事物起源』や石井研堂『明治事物起源』が有名です。どんな事物起源本があるかをまとめた書誌(ブックリスト)も存在します。

日外アソシエーツ『ものの歴史を知る本』、ロバートソン『世界最初事典』、サンダーズ『世界ビギニング・データブック』、富田仁『日本初めて話題事典』、日刊工業新聞社『身近なモノの履歴書を知る事典』『起源事典』、紀田順一郎『事物起源選集』(全13巻)などなど。

 ですが最強の事物起源本は実は百科事典です。百科事典の項目には、その起源が触れられていることが多いのです。なので起源が知りたいときはまずは百科事典を引き、それで駄目なら事物起源ものに当たることが多いです。ウェブであれば、複数の辞書の結果が出てくるコトバンクを使うと便利です。

 例えば、「電車」や「コンクリート」で引くと、次のような内容が出てきます。

「電車の歴史は、1834年アメリカのT. ダベンポートが小さな電池式電動機をつくって模型電車を軌道上に走らせたことに始る」

「鉄筋コンクリートは、フランスの造園家J. モニエによるベルサイユ宮殿のオランジュリーの花壇で使われ(1849)、1850年F. コワニエによって初めて建物に利用された」
(上のはどちらもブリタニカ百科事典)

「ドイツのE・W・ジーメンスが1879年の勧業博覧会に出品した電気機関車が電気車の初めで、2年後にはベルリン郊外のリヒタフェルデ・グロース―リヒタフェル間に、36人乗り第三軌条集電方式の路面電車を運行した」

「日本では1890年(明治23)東京・上野の勧業博覧会でアメリカから購入した電車が運転された。」

日本における最初の鉄筋コンクリート構造物は1903年(明治36)京都山科(やましな)の琵琶(びわ)湖疎水運河に架けられた鉄筋コンクリートの橋といわれている」

「建築物としては1904年、佐世保(させぼ)港ドックの付属ポンプ所およびその煙突がつくられている。本格的な近代建築は11年にできた三井物産横浜支店1号館であった」
(こちらは日本大百科全書)