ペットとの暮らしから探る、夫婦生活のヒント

 それでも共同生活を維持しつつ我慢を減らしたいと願う人にのみ、筆者がひらめいた手法を2つ提案しよう。1つは「相手を許容する範囲を広げる」である。「相手を改めて愛する努力をする」と言い換えることもできる。たとえば伴侶に食事中、および食後に口でチャッチャと音を鳴らす癖があり、それが我慢ならないとする。たしかにこの癖自体も不快かもしれないが、ペットを飼ったことがある人ならわかると思うが犬や猫の“口チャッチャ”はかわいらしく思える。つまり同じ行為でも誰がやるかによって受ける印象は大幅に変わる。

 伴侶の“口チャッチャ”が気に入らないのは、おそらくその前段階、伴侶の他の部分にも気に入らない点がいくつもあって伴侶の存在自体がすでにマイナス評価となっているからで、“口チャッチャ”は実は枝葉のひとつに過ぎない…という公算が大きい。

 生理的に不快に感じる部分を「気にしないようにしよう」と努めても気になるものは気になるので、この筋道は捨て置こう。伴侶の長所を改めて数え上げてみれば見方が変わることがあるかもしれない。「口は楽器店で売りに出したいくらいチャッチャと鳴るけど、まあ愛すべきところもたくさんある人だから」と思えれば勝ちである。
 
 共同生活を維持しつつ我慢を減らす方法その2は、「相手の行動を是正する」である。言葉で伝えても相手に聞き入れられないときはどうすればよいか。これはぜひ猫のしつけを参考にしたい。犬はトレーニングを繰り返せばちゃんと学ぶので、正攻法でしつけることができる。猫はというと、猫は人間の言うことを聞かず勝手気ままに生きる生き物で、犬に通用するようなしつけを施してもほぼ意味をなさない。猫を人間の希望通りに行動させるためには、行動を誘導していく必要がある。たとえば暴れる癖がある猫は、しっかり遊び相手を務めてストレスを発散させて疲れさせる。隅にうずくまって出てこない猫には、出てきても安心できるような部屋作りをする。テーブルの上の花瓶を落とすのが趣味な猫に対しては、そもそも花瓶を置かないようにする、などである。
 
 これを人間にも応用するのである。ソファから動かず指示ばかり出してくる夫あるいは妻が嫌なら、ソファにお酢をまいたりダニを仕掛けたりして居心地の悪い場所にしてしまえばいいのではないか。ソファから離れて床や布団をダラダラする定位置に定めようとするなら、そこにもお酢を。
 
 指示だけ夫あるいは妻ならほぼ確実に「ソファがくさいからどうにかして」と言ってくるだろうから、これには「シーツは洗った」などと適当に嘘をついて調子を合わせておけばいい。それでも納得せず、自分でシーツを洗い出したらこれは千載一遇のチャンスである。
 
 もちろん上記は冗談だが、パートナーの態度に我慢ならなくなったとき、こんな想像を働かせたくなることもあるだろう。夫婦関係に関する愚痴は発散すれば気持ちよく、聞けば時に面白く、時に救いとなる。愚痴がまったく生じない夫婦関係はよほど稀有で、どこかで愚痴りたくなるのが夫婦関係たるものだが、できるだけ愚痴からは遠いところで仲良く健やかに過ごせればそれに越したことはない。筆者も夫婦関係を運営する一人として妻にネットでネタにされないよう、明日も食事は静かに咀嚼(そしゃく)することを心がけたい。