「開成」はなぜ定期試験をオンラインで行うことができたのか部活動もさかん。バレーボール部は、中学生が荒川区の大会で優勝、高校生が新人戦で東京都ベスト16に入るなどの実績を持つ 写真提供:開成学園

オンライン授業による生徒間での学びが収穫

――オンラインによって普段と違うこんなおもしろい授業や取り組みができたということはありますか?

野水 必ずしもオンライン授業だからということではないのですが、一部の先生は生徒にレクチャーをさせて、その生徒に他の生徒から質問させる授業を行っていました。授業の流れに沿って、あらかじめ担当する生徒を決めておき、先生は生徒から出た答えにもう少し専門的な立場からアドバイスするというものでした。

 録画されたその授業を見せていただきました。先生が授業を生徒と双方向で行うことで、いろいろ質問が飛び交っているところを見ることができ、すごく有機的であると思いました。生徒からも、黒板と違って画面がとてもよく見えるので、すごくよく分かるという声を聞いています。

 予想していなかったこともあります。普通の授業は1コマ1コマ区切られていて、質問時間はその間の10分程度に限られます。ところが、Zoomで双方向の授業をする先生と、ビデオ配信する先生とまちまちでしたから、生徒の方が時間管理をして、双方向の場合は授業終了後の質問時間が30分も1時間も続いてしまったこともあったといいます。

――先生と生徒の間のコミュニケーションが深まったかもしれませんね。

野水 おもしろいと思ったのは、生徒の中で学びが発生していた点です。先生は課題を生徒に投げるのですが、生徒は自分たちでZoomの部屋を作り、お互いにその課題を解決して、最終的には Google Documentで書き上げた解答を教員に戻していました。

 このやりとりの間、教員は関わっていません。分からない子は分かる子たちから聞いて課題を仕上げるという、その過程に学びがあったのではないかと思います。たぶん、教室での授業だとそこまで時間が取れませんし、放課後に部活があったりして忙しいのですが、自分たちで時間管理も含め設定をすべてできたというのがコロナの中の新しい学びの姿だったかなと思います。

 また、遠隔授業の効果の一側面として、先生方は、授業の内容や組み立ても生徒が飽きないように、普段よりいっそうの工夫が必要だったと聞きます。その結果、大人の方が見ても興味深い内容の授業も多かったようで、生徒の後ろで保護者の方が見ていたというような話も聞きました。開成には授業参観がありませんから、保護者の方にとっても新鮮だったかもしれません。授業後に、授業内容について親子で話し合ったというような感想もあったそうです。

――1学期の中間考査ではオンラインでの試験も実施されたそうですね。

野水 例年実施している科目はすべて、遠隔で行いました。試験課題をClassroomにアップし、期限を定めて答案を返信する形のほかに、Zoomにより試験問題を開示し、Google Formや Google Documentなどを活用して一定時間内に回答させた科目もあったようです。

――現状の学校の様子はいかがでしょうか。

野水 1学期はほとんど遠隔授業でしたので、2学期からようやく生徒とは触れ合うようになったという感じです。私の在校していたころと比べて、表面的にはそんなに変わらないように見えますが、部活動や同好会活動ですごい才能を発揮している生徒や個性の目立つ生徒がいます。ちょっとこれは、私たちの時代では考えられなかったような雰囲気がありますね。

――それは良い変化ですね。

※第4回に続く