従って、「つがい」として最も効果的に絆を深めるには、性交の際に両者でオーガズムを感じることが大切であろう。安定的なペアの形成に寄与するオキシトシンは、まさにホルモンによる生存戦略であり、この巧妙な進化には畏敬の念を抱かざるを得ない。

最強の医師団が教える 長生きできる方法『最強の医師団が教える 長生きできる方法』(アスコム刊)、福島県立医科大学の前島裕子特任教授ほか日本を代表する名医10人が、健康長寿につながる確かな情報を伝える。216ページ。

 ヒトから無脊椎動物まで多くの生命体に存在するオキシトシン。たった9個のアミノ酸より構成される神経ペプチドが織りなす多彩な機能。ヒトが言語を持ち、社会的秩序を確立し、高度なコミュニケーションを築くために進化してきたとしか思えないホルモン。

 前島特任教授がオキシトシンを知ったのは高校時代の生物の授業。お腹をすかせた赤ちゃんがすぐに乳首に吸いつき、乳管から母乳を押し出す「射乳反射」や、分娩を促すホルモンとしての存在だった。その原体験をはるかに凌駕する、オキシトシンの効能と魅力。超高齢社会の健康寿命の延伸、「ウィズコロナ時代」の家庭・社会コミュニケーションの改善を胸に抱く前島ラボの、たゆまぬ挑戦に期待したい。

(監修/福島県立医科大学 病態制御薬理医学講座 主任教授 下村健寿)

◎前島裕子(まえじま・ゆうこ)
福島県立医科大学 病態制御薬理医学講座 特任教授。世界的オキシトシン研究業績を有する、日本を代表する科学者。生活習慣病やエネルギー代謝領域で最高峰の学術雑誌「Cell Metabolism」(IF15.950)他で数多くの英文論文を発表。「幸せホルモン」と呼ばれてきたオキシトシンが、肥満治療にも有効であることを突き止めるなど、オキシトシンのさらなる効能の解明に挑む研究は、日本だけではなく世界からも注目されている。