「子どもができるなら、会社員のほうが安定していていいかな、と思っていたんですが…夫婦2人なら自分のやりたいことに人生を振り切ってもいいんじゃないかな、って。当時、副業だったデザインのお仕事が増えつつあったので、思い切ってそちらで頑張ってみよう、と決意したんです」
 
 ケンタさんも応援してくれたという。「君なら大丈夫だよ」とハルカさんが落ち込んでいるときは寄り添い、励ましてくれた。

 フリーランスの仕事には波がある。収入が安定しないときもあったが、地道に続けているうちにハルカさんにぜひ、という仕事も増えていった。
 
「子どもがいなくても、仕事を頑張る人生もいいじゃないか、と思えたし、やりがいも感じられるようになりました」
 
 一緒にいる時間が長くなればなるほど、夫婦仲も熟していった。いくつかの問題をはらみながらも。

「子どもがいなくても楽しい」と思えるようになった矢先に

 年に2回は夫婦で旅行に行き、休日はデートに出掛けたり、イベントごとは2人で楽しむ。恋人の延長線上にあるような関係が楽しかった。同時に、ケンタさんを見ているうちに、ハルカさんは今の選択が正しかったのだと思えるようになっていた。
 
「付き合っているときからうすうす感じていたんですけど、彼は全くと言っていいほど家事ができない人だったんです。ひとり暮らしをしていたんですが、食事はコンビニやスーパーで買ってきたもので済ませていたし、モノをあまり持たない人だったので掃除もあんまりしていなかったみたい」
 
 モノをあまり持たなかったのも、掃除がめんどくさかったからだという。結婚してからはモノも増え、出したら出しっぱなし、ということが増えた。
 
「私自身は家事が好きなほうだったので、ついでに片付けていました。まあいいっか、って。でも、子どもがいたら全部を私がするのはきっと無理。もしかしたら彼は自分のそういう性質を自覚していたのかもしれない。だとしたら、子どもを作らないという選択をしたのは正しかったんじゃないかな、って思えるようになったんです」
 
 ハルカさんは、ケンタさんとの子どもが欲しかった。その気持ちを心の奥にしまい、自分の気持ちを納得させるためにいろんな思いを積み重ねていったのだ。しかしそんな努力はその後、ケンタさんの一言によっていとも簡単に崩される。