美容クリーム1個が「12万6000円」というから尋常ではない。この9月、資生堂が発売する超高級化粧品「クレ・ド・ポー ボーテ 新シネルジックライン」。美容クリームのほかにも、洗顔石けん1万500円、化粧水2万1000円など、5種類の商品すべてを揃えれば、ザッと20万円かかるという。

 これまでも10万円を超える高額化粧品はないわけではなかったが、いずれも受注生産品や限定品扱い。資生堂のように定番品として売り出す例はなかった。

 化粧品は通常、数年の開発期間で世に出るが、「新シネルジックライン」はなんと14年も開発に費やした自信作。最先端の美容成分をふんだんに盛り込んだ結果が、このお値段なのだとか。

 2万円以上の「超高価格帯」化粧品市場は約300億円。3年前と比べて24%も伸びた。年収1000万円以上のキャリア女性が年々増えているほか、世帯年収2000万円以上の主婦が、子育てを終えた40代後半から高額消費に走る傾向が顕著になっている。こうした「新富裕層」と呼ばれる女性たちが、資生堂の新たなターゲットだ。

 同社の既存高級ライン「クレ・ド・ポー ボーテ」は全国約3000店で販売されているが、新シネルジックラインは約260店にまで絞る。販売店を選別し、販売員研修にも細心の注意を払う。

 広告宣伝も、雑誌広告などのマス路線は抑え、ゴールドカード会員向け情報誌など、新富裕層の女性たちにダイレクトに訴求するルートに力を入れる。

 単なる話題づくりに終わるか、超高級ブランドとして定着するか。販売目標は「公表しない」というから、余計に気になるところではある。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 津本朋子)