中国の規制当局は、アリババ傘下のアント・グループが築いた巨大なフィンテック(ITを活用した金融サービス)の帝国を事実上解体しようとしている。これは投資家にとっての教訓だ。アントの解体は、中国国内企業の生死が共産党の思惑次第だという現実を改めて気付かせてくれた。馬雲(ジャック・マー)氏は自身が創業した電子商取引サイト「アリババ」の商品代金支払い管理のため、アントの前身である「アリペイ」を2004年に創設した。彼は、国有企業が支配する中国の銀行システムの信用不足に目を付け、保険・資産管理・個人の信用格付け・消費者ローンなどの金融サービス分野に事業を拡大した。共産党指導部は、中国経済を消費者主導型に変えるという目標の実現に寄与しているとの理由から、アントの活動を容認した。しかし規制当局は、アントが政府による資本市場管理を脅かしていると判断した場合には、しばしば同社に制約を科してきた。国有銀行の預金減少を招いたアントのマネーマーケット・ファンド(MMF)の利回りを当局が抑制したのはその一例だ。