オールド・メモリーズ主催のカーショーで展示された1946年製のシボレー・フリートマスター・コンバーティブル。車高が低いのがわかる。
ロザンゼルス発祥の「ローライダー」文化をご存じだろうか。車体を低くして乗るこのスタイルは、1940年ごろに生まれ、今なお多くの人たちに親しまれている。現地ジャーナリストが、2025年秋冬に開催されたLA自動車ショーと、ローライダー専門のカーショーを訪ね、愛好家たちを取材した。(取材・文・写真/ジャーナリスト 長野美穂)
通行人が思わず振り返る!
「過去がやってきたような」クラシックカー
「車高を地面ギリギリまで低く下げて、仲間たちと地元のウィティアー大通りを連なってゆっくりと走る。これが最高に粋で楽しいんだよ」
そう語るのは南カリフォルニアに住むサム・カンポスさん(66歳)だ。
彼の愛車は、1948年に発売されたGMのシボレー・フリートライン。この車には「ジャーマン・ヘルメット」というニックネームがついている。
第二次世界大戦終戦からわずか3年後に売り出された大衆車で、丸みを帯びた流線型のトランクが、戦時中のドイツ軍の鉄製のヘルメットの形に似ていたため、そう呼ばれた。
自動運転タクシーや電気自動車のテスラ車がひしめく現在のロサンゼルスの公道では、カンポスさんの愛車はタイムカプセルから過去が突然やってきたような存在で、通行人たちが思わず振り返って眺める。
「1950年代のシボレー車は労働者階級が唯一買える値段の車だった。そしてその車高をできるだけ低くして乗るのが、メキシコからの移民の独特のプライドだった」とカンポスさんは語る。
それを人は「ローライダー」と呼ぶ。
カンポスさんと妻のマリーさんは共に「オールド・メモリーズ」というクラシックカー愛好会の会員として活動してきた。「オールド・メモリーズ」は1978年にサウス・ロサンゼルスで創設され、LA発祥の「ローライダー文化」の伝統を継承してきた団体だ。
オールド・メモリーズの会員サム・カンポスさんと妻のマリーさん。







