中国の規制当局は電子商取引大手アリババグループ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏に対し、同氏率いるフィンテック大手アント・グループが消費者から収集している大量の信用データを共有させようとしている。マー氏は当局によるこうした試みに長らく抵抗してきた。だがマー氏にはほとんど交渉の余地がない。数十年かけて築き上げてきた同氏のビジネス帝国には、規制当局ばかりか習近平国家主席からも厳しい視線が向けられている。背景には、金融リスクを制御するという国家的な目標より自身のビジネスの繁栄にマー氏がこだわり過ぎていると中国政府が懸念していることがある。マー氏はアントの支配株主だ。アントに対する締め付けの中核にあるのは、同社が電子決済アプリ「支付宝(アリペイ)」を通して収集する大量の個人情報によって、小規模な融資業者や、さらには大手銀行に対しても不当に競争優位に立っているとの規制当局の見解だ。