ビデオ会議のスーパースターである米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズは、自らのピークを正確に判定できなかった。だが同社には今なお、投資家の熱意を現金に換える十分な余力がある。ズームは12日、新株発行(普通株)に向けた申請書類を提出した。株式売却により15億ドル(約1550億円)の資金調達を目指すという。2019年4月の新規株式公開(IPO)以降で初の大規模な公募増資となる。ズームは提出書類の中で、調達した資金は「運転資金および一般的な企業の目的」に使用するという決まり文句の説明をしたが、企業買収の原資にする可能性もある。ただ、目下進んでいる案件があるわけではない。ズームのビデオ会議事業は、新型コロナウイルスの感染再拡大もあり、依然活況を呈している。だが投資家はすでに、感染流行が終息した後の生活が同社にとっていかなる意味を持つのかを考え始めている。昨年急伸した同社の株価は、10月半ばのピーク時から今や40%下げている。また、予想PSR(株価売上高倍率)が30倍前後と今も高い評価を受けているものの、クラウド関連株の中ではもはや特別な存在でなく、少なくとも十数社が予想PSRで同社を上回っている。