ぼんやりと考えながら、持参したゲーム機のスイッチを入れ、遊び始めた。透析の所要時間は1回4~6時間。何もしないで過ごすには長過ぎる。当初は耐え難いほど長く、無意味な時間に感じたが、徐々に自分なりの過ごし方を見つけ、最近はだいぶ慣れて来た。

 透析とは自身の腎臓の代わりに人工腎臓のフィルター(血液浄化器)を介して、血液から老廃物・余分な水分を取りのぞく治療だ。

 ヨシアキさんは3年前のある朝、目覚めると急に体が動かなくなっていた。救急搬送された地域唯一の総合病院で検査を受け、急性腎不全であることが判明した。

「腎臓がほとんど働いていません。非常に危険な状態です。入院していただき、治療しますが、機能が回復しなかった場合には透析を導入していただくことになります」

「まさか。それ、本当に私の検査結果でしょうか。何かの間違いではないですか」

 医師の説明は信じがたく、聞き返してしまった。忙しさにかまけて数年間、健康診断をさぼってはいたが、特に体調が悪いと感じたことはなく、それこそ前日まで普通に働けていたからだ。職場の人間が健診のたび、やれクレアチニンがどうの尿タンパクがどうのと言っているのは聞こえてはいたが、腎臓病なんて自分は無関係だと思っていた。

週3日の透析生活
災害時にはバケツリレーに救われた

 透析は、腎臓の機能が正常の10%未満に低下した場合に導入が考慮される。尿から老廃物や水分が適切に排泄されなくなり、尿毒症・水分過多による心不全等の症状が出てくる危険性があるからだ。

 結局、ヨシアキさんの腎機能は回復せず、失意の中、血管から毎分200~400mLもの血液を取り出し、血液浄化器を通すためにシャント(動脈と静脈を結びつけて作る血流量の多い太い静脈)を作る手術を受け、透析生活に入った。

 幸い職場は透析に理解があった。

 週2日、月曜と水曜日は17時に定時退社して病院に向かい、4時間の夜間透析を受けながら夕食をとる。金曜日は残業が入ることが多いため、時間的にも精神的にもゆとりが持てる土曜の朝から午後にかけて6時間の長時間透析を受ける。標準的な透析時間は1回4時間が主流だが、それでは水分や老廃物が体内に残り、身体に負担がかかる。