人工透析というと、血液透析をイメージする人が多いだろう。血液透析では、基本的に週3回、決まった時間に病院に通う必要があり、働く人には特に負担が大きい。しかし、透析には「腹膜透析」という患者自らが家庭や職場で治療を実施する方法もあり、血液透析よりも柔軟な生活が送れるケースもあるという。聖路加国際病院腎センター長の中山昌明医師に血液透析と腹膜透析のメリットやデメリットを教えてもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 林 恭子)
週3回4時間の血液透析は
働く人には大きな負担に
――慢性腎臓病が悪化した場合、どのような治療法がありますか?
慢性腎臓病の治療には、大きく「透析治療」と「腎移植」の2つがあります。腎移植は年間約1700件に対し、新たに透析を始める方は年間約3万9000人(2017年)ですから、透析治療を選ぶ人が大多数であることがわかります。
日本透析医学会のガイドラインでは、腎機能が正常の15%未満(GFR値【糸球体ろ過量】15 ml/分未満)になった人は透析を意識し、医師は患者に十分な情報提供をすることになっています。ただし、15%を下回ってもすぐに透析治療を開始する必要があるとは限りません。ここでのポイントは、腎機能が低下するスピードです。状態が悪いなりに腎機能が安定していれば慌てて透析を開始する必要はありません。
私どもの病院では、腎機能が正常の10%を割った頃から透析に関する具体的な話し合いを始めますが、過去1年、2年の低下のスピードを見て、半年後には5%近くになることが危惧された場合には、透析治療を開始する準備をなるべく早く整えます。
――透析治療というと「血液透析」をイメージしますが、どういう治療を行うのですか?
血液透析は週3回、1回の治療時間が約4時間です。治療時間は4時間でその準備にプラスアルファの時間がかかります。1分間あたり200ccくらいの血液を連続的に引き抜いてきれいにして戻す治療を行うのが、血液透析の基本的な方法です。