米中貿易摩擦で業績が落ち込んだところに新型コロナウイルスの感染が拡大し、またもや顧客の設備投資意欲がそがれるのではないかと懸念されたFA(ファクトリーオートメーション)業界。しかし、リーマンショック時の打撃に比べればはるかに影響は軽微ですみそうだ。その理由を、サーボモータやインバータ、ロボットなどに強みを持つ安川電機社長に聞いた。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
“所詮”1割程度の落ち込み
21年2月期の業績が意外に手堅い理由
――新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年の前半は自動車販売が急減しました。一方で半導体需要は旺盛です。FA(ファクトリーオートメーション)関連各社は、これら業界に広く製品を納めていますが、安川電機の21年2月期の業績はどのあたりで着地しそうですか。
ざくっと言うと、20年2月期と変わらんレベルで着地するかもしれない。確かに打撃は受けているんだけど、“所詮”1割以内の落ち込み(売上高ベース)かなと思っています。
20年3~11月期までの市場の戻り方や足元(20年12月中旬時点)の状況から言うと、まあまあそのくらいで済むんじゃないか、ひょっとしたらもうちょっとマシになるかもしれんねって感覚なんよ。これはうちの会社だけじゃなくて、FA業界全体がそうなっている。
テレワークなどが増えて、仕事で使うプリンターやパソコン、ルーターなどがすごく売れているわけですね。それに外出自粛で家の中に閉じ込められることが増えたから、台所で使うものやミシンも売れている。「ミシンなんか使うタイプじゃなかったやないか」って人まで「マスクを作りましょう」とかなっているわけですよ。
ただし、です。20年2月期の市況は、メディアの皆さんにこぞって書かれるくらい悪かった。
――安川電機も20年2月期は、売上高が前年同期比13.4%減となり、営業利益率が3期ぶりに10%を下回りました。
米中貿易摩擦により、19年5月からダダダダダーって需要が落ちてきたんでね。それでも米中問題は何とかなりよったのに、そこにコロナがドーンときたから、20年3~5月期はもう、「会社はどうなるんやろか」と。このままいったらリーマンショックどころの騒ぎやないぞって言っていた。
結果的には、本当に「リーマンショックどころ」ではなくて、あのときのような大打撃は受けなかったのですが。リーマンショックのときは会社が倒れるかと思ったもん。
――10年3月期は赤字に転落しましたからね。しかし今回は、リーマンショックのときと比べて何がそんなに違っているんですか?