ビルは、ロサンゼルス在住時も筋金入りの共和党員で、党のボランティア団体をまとめ、トランプ支持の活動を続けていた。だが、民主党が強いカリフォルニア州では、どう選挙活動を頑張ってもトランプを勝たせることができなかった。

 ところがフロリダに引っ越した瞬間、近所のリタイア住民がほとんどトランプ支持者であることに、ビルはしみじみと感動した。「あの手この手で住民を説得しなくても、住民の多くがすでにトランプに投票することを決めているんだ。まるでパラダイスのような環境だと思ったよ」とビルは言う。

 釣りやボート遊びをこよなく愛するビルは、約58万5000ドル(約5900万円)でプンタ・ゴルダの街の運河に面した一軒家を購入。妻と2人でロサンゼルスから引っ越した。自宅からそのままボートに乗って、運河経由で海まで出られる。自宅庭には巨大なトランプサインを2つ立て、ボートにはトランプ旗を飾っている。

「物価や税金が高すぎるロサンゼルスでは、家の価格が何億円もする。固定資産税も高い。とても引退生活など送れやしない。だが、税金も物価も安いフロリダでなら引退できる」

トランプ再選のための
草の根運動に全てを捧げる

 ビルが現在住むコミュニティは、住民の9割が白人。同じような70代以上のリタイア組が主だ。元企業のCEOやCFOだった彼らは、毎日テニスをして過ごしている。しかし、ビルは大好きな釣りもやらず、昨年3月から毎日、トランプ再選のための草の根運動にほとんど全ての時間を捧げてきた。

「トランプは選挙で、フロリダ州を何としても死守しなければならない。うっかり油断していたら負ける。そのためには民主党の牙城であるLAで、逆境の中で培ったローラー作戦が徹底的に活用できる」

 トランプかバイデンか、どちらに投票するか決めかねている層をターゲットに、ビルは手づくりのビラの文面を練った。

「Law and Order(法と秩序)」

 この言葉を、ビラの一番上の目立つ場所に印刷した。