いよいよ米国大統領選挙が行われる。世界の今後は予想しにくくなっているが、トランプ政権が激変させた国際社会の4年間を振り返り、日本が今後覚悟すべき米国との関係を考えたい。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
トランプ政権が4年間で再構築した「距離感」
米国大統領選挙が11月3日に行われる。民主党のジョー・バイデン候補がリードし、共和党のドナルド・トランプ大統領が猛追する展開となっている。特に、大統領選の勝敗を左右するとされるペンシルべニア、オハイオ、ミシガンなどの「激戦州」では僅差の大接戦となり、予断を許さない展開だ。トランプ大統領が敗れた場合、その結果を認めず最高裁まで、もつれ込む大混乱になるともいわれている。
2016年11月、トランプ氏が大統領選に当選した夜、筆者はいろいろなテレビを見て、インターネットの評論を読んでいた。ほとんどの識者が強い衝撃を受け、意気消沈していた(本連載第145回・p5)。あれから4年がたったが、今回の大統領選でも識者の顔ぶれは変わらない。だが、今後の展開を予想できず、さえない顔をしている。
トランプ大統領が誕生した後、いろいろなことが起きた。国際政治学の権威も、しきたりも、常識も全く通用しなくなり、識者は自信を失ったようにみえる。
今回は、トランプ政権の4年間を振り返る。トランプ政権によって構築された新しい国際社会についてまとめておきたい。「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げたトランプ政権がやってきたことは、端的に言えば、米国とさまざまな国々との間の「距離感」を再構築する取り組みである。