前回は、医療用精密器具のトップメーカーのマニー株式会社の、ミャンマー進出後に直面した進出後の工場での運営における労務管理や、それに伴う労働局とのやり取りについてご紹介した。今回は、電力事情や現地政府との付き合い方、最近の賃上げの状況等、現状の工場運営における基礎条件に焦点を当てたい。

海外展開の中のミャンマーの位置づけ

 現在、マニーは彼らの主力製品の一つである手術用縫合針や歯科用根幹治療機器の加工作業を、ミャンマー工場で行っている。いずれの製品も医療で使うものだけに不良品は許されず、微細な加工プロセスにおいて高いレベルの品質を常に維持する必要がある。マニーは、ミャンマーでそれを実現するために、どのように日々の工場のオペレーションを行っているのだろうか。

 今回も、松谷貫司会長、そしてそれを実務面からサポートしてきた高井壽秀副社長、榎本勲MANI YANGON LTD社長にお話を伺った。

 日本企業で最初の海外進出先にミャンマーを選択する企業は少ない。中国などの国々で既に事業を展開していく中で、第二、第三の海外拠点の一つとしてミャンマーを検討する場合がほとんどであろう。海外事業の展開戦略の中でどのようにミャンマーを位置付けることが妥当なのだろうか。他の海外工場と、どの程度、どのように連携を構築することが望ましいく、ミャンマーはどのような役割を担うべきなのだろうか。

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――貴社の海外戦略の中で、ミャンマー工場の位置づけは。貴社は日本、ベトナム、ラオスに工場がある中で、現在ミャンマー工場での製造対象品目に、手術用縫合針や歯科用治療機器選んだ理由は。製造工程上の特徴等を考えてですか。

松谷会長 今まではどの工程もベトナムでやっていたのですが、より効率性を追求すると一部製造工程はミャンマーに移すほうが良いと分かりました。ミャンマーで製造している製品については、実はミャンマー工場を作る時にその製品の増産がどうしても必要だったからで、何をどこで製造すると最適かは、それほど考えていませんでした。

高井副社長 ミャンマーの場合だと、国の状況に鑑み、そこへ過度に依存するのはリスクが高いので、部分的な工程しか今までやってきませんでした。従って特定の製品の全ての工程というよりは、ベトナムの一部分の工程をミャンマーで、あるいはラオスに移管してやっています。

松谷会長 また最近は、重要度に鑑みこの製品であれば、全工程ミャンマーだけでいいのではというケースも出てきています。