ただ、法律に違反するほどの類似商品かどうかは、機械的に線引きができるわけではありません。判断は裁判官によって行われます。そのときの判断基準が、「周知」された「商品等表示」との「類似性」のために消費者に「混同」が起きるかどうかです。

 今回は、1954年に発売され全国的に周知されている「ヒルドイド」という医薬品に対して、「ヒルマイルド」のネーミングと商品パッケージが類似しているために、消費者の混同が起きるかどうか」が、司法判断のポイントになるわけです。

 過去の判例でいえば、この類似性に関しては、裁判になると本家に有利な判断が下される例が多いようです。多くの場合、メーカーが訴えないから裁判にならないだけで、裁判になった例では、似たパッケージに対して類似性が認められたケースが多いという感じです。

「ヒルドイド」と「ヒルマイルド」は
市場で本当に競合するのか

 ただ、今回の訴訟で興味深いのは、論理的には「ヒルドイド」と「ヒルマイルド」は市場で競合しないはずであり、だから消費者の間で混同が起きるはずがない、という争点が存在することです。

 ヒルドイドは医師が処方する医療用医薬品です。アトピーで肌が乾燥したり、打撲によるあざを治療したりする際に処方されます。薬局で売られている家庭用医薬品とは、本来市場や使用目的が違う商品のはずなのです。

 ところが、主成分の「ヘパリン類似物質」が保湿力に加えて加齢によるしわなどに効能があると口コミで広まり、数年くらい前からアンチエイジングクリーム代わりに利用する女性の数が顕著に増加しました。皮膚科を受診して「ヒルドイドを処方してほしい」と医師にお願いする女性も多いと聞きます。これが医療目的外処方の問題です。

 要するに、美容目的で医師にお願いする行為は法律違反なのです。なので、そうならないように阿吽の呼吸が求められます。皮膚科を受診した女性が「私の肌、ヒルドイドで治療したほうがいいでしょうか」と質問し、医師が「そうですね、ヒルドイド、いいかもしれませんね」と処方箋を書くのです。

 これならば法律違反ではないので問題ないかというと、そうではありません。理由は医療保険制度を圧迫するからです。