GDPで日本を追い抜いたとはいえ、人口が10倍以上の中国は1人あたりのGDPは日本の10分の1の途上国である。

 中国に展開する日本のスーパーで売られている商品は、都市で働く農民工や失業中の若者ばかりか、一般の中国人にとって高嶺の花だった。断絶した社会の向こう側できらびやかに輝く商品への苛立ちと渇望とが、無軌道な行為の誘因となった側面は否定できない。

 日本にやってくる中国人は金持ちだが、本土にいる大多数の中国人は貧しく、苛烈な生存競争の中で、時として落ち着いた判断さえできない状況にある。

 中国のメディアは、反日デモは報道しても暴動・略奪は伝えない。悪影響を及ぼす事象や国家にとって恥ずかしい行為は、報じないのが中国だ。たまたま尖閣問題で反日デモが注目され、その目前で起きたため日本で大々的に報じられたが、中国でよくある暴動が、「反日デモ」という装いで起きただけである。

「反日暴動」は中国の各地で起きている暴動の一端でしかない。背後にあるのは貧富の差、特権階級や腐敗官僚への鬱憤である。13億の民を統治する開発独裁という仕組みが、経済の発展で収まりがつかなくなっているのが今の中国だ。

 途上国である中国を、日本と同じ基準にあてはめて怒ってみても始まらない。日本人に求められるのは先を進むものとしての度量であり、貧しき人々への思いやりだろう。無軌道な中国にムキになるのは、弟の振る舞いに腹を立てる兄のようなものだ。先進国としての自信喪失が背景にあるように思う。

威勢のいいかけ声は「匹夫の勇」

 韓国のサムスンに抜かれ、現代自動車に追い上げられ、中国製品に脅かされる。経済だけは自信があった兄は、長期停滞の末GDPで中国に抜かれ、米国債の最大の保有者という米国の最大スポンサーの地位まで、体の大きな弟に奪われた。

 国際社会では米国に追随する日本から見れば、米国と対等に渡り合う中国は巨大に見える。G7国家として日本が格上と見ていたのに、いつの間にかその地位は逆転していた。日本人の目には「強大な中国」が映り、貧しき中国人の現実が意識から遠ざかりつつある。