悪びれないA

 次の日出社したAは、D課長に呼び出され、勤務時間中に副業をしていたことについて追及されると事実であることをあっさり認めた。D課長はあきれた声で言った。

「副業をする場合は会社の許可が必要なのは知っているだろう?」
「はい。でもテレワーク中だし、わざわざ届けなくてもいいかなと思ってました」
「テレワークは社内で仕事をすることと同じなんだよ。君はそもそも副業の許可を得ていない上に、勤務時間中でも行うとは職務放棄もいいところだ!」
「でもテレワークがヒマだったのでつい…」
「担当顧客の管理もロクにできないくせにヒマだと?ちゃんとするようにメールで再三注意したじゃないか。それなのに何故俺が君の顧客に何回も怒鳴られ、フォローまでしなきゃいけないんだ?」
「はあ…」

 反省する様子がないAの態度にD課長はキレた。

「もうクビだ!社長にもそう言っとくよ」

 Aとの面談が終了すると、D課長はすぐにAの件を社長に報告し、「Aをクビにしましょう」と息巻いた。報告を受けた社長も激怒したが、

「A君の処遇は社労士のFさんに相談してから決めよう。D課長、午後からFさんの事務所へ行って状況を説明し、アドバイスを受けてくれないか?」

 と言い、その場でF社労士事務所に電話をかけ、訪問する旨の約束を取り付けた。

社労士が指摘するAの問題点

 その日の午後、F社労士にAの件について詳細を説明したD課長は、話し終わると、

「今回の件でA君をクビにできますか?他の社員に同じことをされては困りますし、何よりAの顧客にけなされた私の腹の虫が治まりません」

 F社労士は冷静に言った。

「わかりました。まず、Aさんの何がいけなかったかをまとめてみましょう」

<Aの問題点>
(1)副業することに関して、会社に許可を得ていなかった。
…会社の就業規則には、「副業をする場合は会社の許可を受けること」の規定が明記されているため就業規則上の違反にあたる。
(2)勤務時間中に副業を行っていた。
…労働契約に基づく「職務専念義務」違反にあたる。
(3)(2)により、Aの担当顧客から複数のクレームが入っていた。
…クレームに対して誠実に応じなかった場合、会社の信用を失墜させる恐れがある。
(4)(3)に対してD課長からメールで2回注意されていたが、無視していた。
…上司の指示に従わなかったのは、会社に対する「業務命令違反」にあたる。
(5)会社が貸与していたPCを副業のために使用していた。
(6)D課長からの追及に対して、副業の事実は認めたが反省する様子がなかった。