新型コロナウイルスの影響で、春から在宅勤務を続けている社員A。電気代などが増えたのに経費は出ない…さらに退職者の影響で残業も増えたのに手当も出ないのはおかしいと社長に直談判!法的に残業代は払わなくて良いのではないかという上司もいる中、相談を受けた社労士の見解は…?(社会保険労務士 木村政美)
従業員数80名の機械設計販売会社。
<登場人物>
A:28歳。機械設計を担当。4月からテレワーク勤務。
BとC:Aの大学時代の友人でリモート飲み会の常連。
D課長:40歳でAの上司。
E社長:45歳。
F社労士:甲社の顧問社労士。
在宅勤務で電気代などの出費激増!
残業代も出ないのはおかしい!
「アチャーッ!今月分の引き落とし額が2万円!」
8月下旬、スマホでネット銀行口座にログインし、電気代を確認したAは落胆した。コロナの影響で4月からテレワークになり、一日中ほとんど家にいる上に猛暑で部屋の冷房は24時間つけっ放しなので無理もない。他にも顧客や会社の上司とのやり取りで電話代がかさみ、こちらも月2万円突破。さらには仕事ができる環境を整えるためにテスクと椅子を自腹で購入した。しかしテレワークでの出費は仕事面だけではなかった。生活面でも外に出ないことでストレスがたまり、宅飲みとコンビニのおいしい食事やスイーツにハマッてしまった結果、エンゲル係数が上昇。出費のダブルパンチでAの懐は寒くなる一方だった。
その週の金曜日、Aは友人のB、Cと夜中、リモート飲み会で盛り上がっていたが、話題が仕事の話になった。
「ところで、A君はまだ在宅で仕事してるんだよね?」
Bの質問に、Aはそうだと答えた。Bはうらやましそうに
「気軽でいいな。俺なんかずっと会社行ってるよ」
Aは半ばやけくそ気味に反論した。
「気軽どころか大変だよ。電気代や通信費は自腹だし、おまけに3月に後輩が会社を辞めて担当の仕事が全部俺のところに回ってきたせいで、毎日残業してるのに残業代が出ない。これじゃ踏んだり蹴ったりだ!」
するとやり取りを聞いていたCが口を挟んだ。
「それっておかしくね?俺も今テレワークだけど、経費は全部会社持ちだし、残業代だって事前に申告すれば払ってくれるよ」
Aは驚いた。
「えっ、そうなの?知らなかった」
「テレワークは会社の都合でやるんだから当然だろ?明日にでも上司に『かかった経費と、余分な仕事のせいで残業してるんだから残業代も払ってください』って話しなよ。経費はともかく、もし残業代の支払いを拒否られたら、『労働基準監督署に相談する』って言えばいいよ」