話し合いで解決
絵に描いたような寓話的夫婦像
「衝突したことはほぼない」と話すAさん(42歳男性)は、ある夫婦円満の秘訣をなるべく守るよう心がけていて、自身のその姿勢を自慢に思っている。
「“妻には逆らわない”が夫婦関係をうまく維持していくコツだと思います。そもそも、育児関連の諸事には妻の方が労力を割いてくれているので、妻により強い発言権があるべきだとも考えています。
しかし“逆らわない”といっても一応こちらも逐一意見はあるので、それを述べて最終決定は妻に委ねるようにしています。結果的に僕の意見が採用されるケースも少なくありません」(Aさん)
男性目線のセオリーなので女性目線だと異なるかもしれないのだが、Aさん夫妻が円満ならそれに越したことはない。Aさん夫妻のように共に相手に対して素直に心を開いていると、話し合いを建設的な意見交換の場とすることができる。
そんなAさんだが、「衝突した」としっかり記憶する一件があるそうだ。
「子どもが寝る前にスマホを触らせていいか否か、で妻とぶつかりました。
うちの子の就寝時間が不規則になりがちだったので、スマホのブルーライトが原因のひとつになっていると考え、『寝る1時間前からスマホを触らせるのをやめよう』と提案しましたが、妻は『子どもが寝ようとしない原因は複数あるから、スマホだけ取り上げても無駄ではないか』と反発しました。
『そうは言っても、やっぱり原因の一つならそれを解決した方がいいのでは』と内心思いましたが、そもそも妻の方が育児時間は長くて、大変な思いをしています。子どもにスマホを貸すのはその間だけでも比較的楽ができるからで、妻に対して僕がとやかく言える筋合いではないと思い至りました」(Aさん)
それから、Aさんは残業や付き合いを調整し、妻と日々交代で当たっていた寝かしつけを全面的に買って出た。妻の負担を減らすとともに「寝かしつけは自分のオペレーションだし、スマホ取り上げてもいいよね?」と一応お伺いを立てると、妻は異論なくむしろありがたがり、かくしてAさんは自分の意見を通すことに成功したのである。
口先だけではおそらくそうはいかなかったであろう。行動によって示した誠意が相手の心を動かすことがある、ということを示す良い一例である。