韓国はその一方で、中国に関しては、これまでの白書にあった「THAAD(高高度防衛ミサイル)を巡る対立」の項目を丸ごと削除し、「両国関係の安定的発展」という表現も用い、2017年の韓中首脳会談など「正常化の努力」を記述した。

 こうした、日本と中国に関する記述についてソウル大学の朴喆熙(パク・チョルヒ)教授は、「均衡感を喪失すれば韓米日協力を強調するバイデン政権に誤ったシグナルを与えかねない」「中国は西海(ソへ、黄海のこと)で領有権を主張しながら侵犯しているのが現実だが、本当にわが国の軍が主権を守る意思があるのか疑問を感じるほどだ」(中央日報)と警鐘を鳴らしている。

 朴教授の指摘のように、韓国政府、メディアを挙げて、米国のバイデン大統領が日本の菅義偉首相とは1月28日に電話会談したにもかかわらず、3日午後になっても文在寅大統領には電話がないことに焦りを覚えているようである。

 韓国のメディアは中韓首脳の電話会談を米韓に先立って行ったこと、その内容も中国ペースだったこと、特に、中国共産党の100周年に対する祝意を述べ共産党の功績をたたえるような発言をしていることが、米国の不興を買っているからであろうと分析している。

 国防白書はこうした文在寅政権の姿勢を体現しているといえる。

北朝鮮は敵国ではない
南北関係改善の意思表示も

 その一方で、軍事的な脅威の高まる北朝鮮について、文在寅政権の誕生後に出した2018年白書では「主敵」「敵」という表現を削除したが、これを今回も踏襲した。それまでは「韓国軍は大韓民国の主権、国土、国民、財産を脅かし侵害する勢力を韓国の敵とみなす」と記述していた。ただ、盧武鉉政権では「直接的な軍事脅威」として「敵」という表現は用いなかった。

 軍は今回の白書で、各種弾道ミサイルなど北朝鮮の軍事的脅威が強まった点は指摘した。特に「大口径放射砲(ロケット砲)を開発、朝鮮半島全域を打撃できる放射砲を中心に火力を補強している」と記載したが、「戦術核兵器開発」に関する評価はなかった。