白人至上主義者を擁護し続けたトランプ
「新たな攻撃」に怯え続けるアメリカ
「大統領選挙に大規模な不正があった」と主張を続け、過激な支持者を扇動して連邦議会議事堂を襲撃させたと指摘され、米国史上初の2度目の弾劾裁判に問われることになったトランプ前大統領。
その波乱に満ちた4年間の任期を終えたが、彼が勢いづかせた白人至上主義者、極右過激派の怒りや暴力は、今米国社会の大きな脅威となり、バイデン政権を悩ませている。
トランプ大統領が任期中に擁護し続けた白人至上主義者は、SNSなどを通して武装民兵組織「ミリシア」や陰謀論者「Qアノン」などとの結束を強め、「新たな攻撃」を計画しているとされ、国土安全保障省は警戒を強めている。
トランプ氏が起こした、選挙結果をめぐる60数件の異議申立てのほとんどは裁判所に却下され、ジョージア州やウィスコンシン州などでは票の再集計が行われたが、結果は変わらなかった。
にもかかわらず、「選挙は盗まれた」と言い続け、それを自身の支持者(主に白人)に信じ込ませた。それができたのは、トランプ氏が「生来の嘘つき」であることに加え、彼の支持者の多くが抱えている白人特有の「被害者意識」に訴えたからではないかと思われる。
つまり、近年の米国社会では有色人種・移民の人口増加や経済的台頭などによって、白人の優位性(特権)が徐々に失われているが、この状況に対し、「自分たちはグローバリズムや多文化主義、ダイバーシティの被害者である」との不満、不安を感じる白人が増えているのだ。
その傾向はトランプ支持者の中に顕著に見られるが、トランプ氏はそんな彼らに対し、「自分も民主党やリベラルなメディアによって仕組まれた、不正選挙の被害者である」と訴え、同情を誘ったのである。それがうまくいったのは、トランプ大統領が任期中にずっと白人至上主義者を擁護していたからであり、彼らにとってトランプ氏は白人優位社会を維持するために戦う「同士」であり、「尊敬するリーダー」なのである。