選挙後のビバリーヒルズでトランプ支持者による「Stop the Steal」のデモ。トランプ出現は米国民に何をもたらしたのか
選挙後のビバリーヒルズでトランプ支持者による「Stop the Steal」のデモ。トランプ出現は米国民に何をもたらしたのか

米国でバイデン新大統領が誕生し、トランプ時代が幕を下ろした。ちょうど4年前の同じ日、トランプ氏を批判した1本のツイッターを理由に、殺害予告を受けた高校教師がいる。一方、熱烈トランプ支持者であるがゆえに、民主党の牙城のカリフォルニアで八方塞がりだった営業マンがいる。60代のマークと70代のビル。2人の男の人生は「トランプ出現」で激変した。「分断」という手垢のついたメディア常套句では語れないふたりの世界の違いを、それぞれの「生の声」と共にお届けする。(取材・文・撮影/ジャーナリスト 長野美穂)

「アメリカにとって最悪の日」
そのひとことで人生が激変した

「今日はアメリカにとって最悪の日だ。911テロと真珠湾攻撃を合わせたよりも、はるかに悲惨な日だ」

 今から4年前の2017年1月20日、北ミシガン在住の高校教師マーク・ポントニ(65)は、個人のツイッターアカウントで、こうつぶやいた。首都ワシントンDCでトランプ大統領の就任式が行われた当日だ。

 フォロワーが25人ほどしかいなかったはずの彼のつぶやきは、瞬く間に教え子や卒業生のフェイスブック上で拡散され、街中で話題になった。3日後、マークは勤務先の公立高校から「処遇を決めるまで謹慎処分にする」と言い渡される。

 この日から彼の人生が激変した。

「銃でお前を撃つ」という殺害予告が武装集団から4件あった。当時彼が住んでいたのは、カナダ国境に近いミシガン州エメット郡の人口約6000人のスモールタウン。住民の9割以上は白人だ。保守派の保護者や住民から「こんな危険な思想を持つ人間が教師を務めていていいのか」と大バッシングが起き、彼の謹慎処分は地元テレビ局でトップニュースとして扱われた。

 マークはツイートした日のことをこう振り返る。

「トランプが共和党の代表候補者になったときも驚いたが、実際に当選した日はあまりにショックで落ち込んだ。だから、就任式の日には、自分の正直な気持ちをそのままつぶやいた」