日本の匿名掲示板として圧倒的な存在感を誇った「2ちゃんねる」や動画サイト「ニコニコ動画」などを手掛けてきて、いまも英語圏最大の匿名掲示板「4chan」や新サービス「ペンギン村」の管理人を続ける、ひろゆき氏。
そのロジカルな思考は、ときに「論破」「無双」と表現されて注目されてきたが、彼の人生観そのものをうかがう機会はそれほど多くなかった。『1%の努力』(ひろゆき)では、その部分を掘り下げ、いかに彼が今の立ち位置を築き上げてきたのかを明らかに語った。
「努力はしてこなかったが、僕は食いっぱぐれているわけではない。
つまり、『1%の努力』はしてきたわけだ」
「世の中、努力信仰で蔓延している。それを企業のトップが平気で口にする。
ムダな努力は、不幸な人を増やしかねないので、あまりよくない。
そんな思いから、この企画がはじまった」(本書内容より)
そう語るひろゆき氏。インターネットの恩恵を受け、ネットの世界にどっぷりと浸かってきた「ネット的な生き方」に迫る――(こちらは2020年3月3日付け記事を再構成したものです)
トップの人が下を殺しうる
以前、孫正義さんが、「死ぬ気でやればやれないことはない」ということをツイッターに書いていて、それに僕が噛み付いたことがある。
孫さんのように人の上に立つ人が、下に向かって「努力しろ」と言うのは、社会にとって逆効果だと思ったからだ。
ついこないだ、日本軍はアメリカと戦争をした。あの当時、どう考えても日本軍がアメリカ軍と戦争して勝てるはずがなかった。
石油や弾の数、食料などの資源や物資の量が違うし、兵士の数も違う。
なのに、個人の努力でなんとかしようとして、結果、たくさんの人が命を落とした。上の人たちの判断で、多くの一般の人たちが犠牲になったわけだ。
下がいくら頑張ったところで、やはり勝てないものは勝てない。
正しい戦略で正しい作戦かどうか。そういった上の判断が先にある。
社員はやっぱり悪くない
いま、東芝などの大企業が経営的に傾いている。
東芝の社員、1人1人の努力が足りないかというと、そうではない。
おそらく、他の企業と比べても、現場の人の努力の質や能力の差は、そこまでないだろう。
悪いのは、経営層だ。
東芝の場合、原発事業に投資して赤字を垂れ流した結果、経営がガタガタになってしまった。
東芝の社員の努力が足りないわけじゃない。
大きな組織のトップになると、現場の状況がわからなくなって、「みんなの努力が足りない」などと言い出し、スタッフたちの責任にしたがる。
しかし、本来はトップの判断の間違いで結果が決まってしまう。
ということは、逆も言える。
上の判断がよければ、下がテキトーでもうまくいく
優秀な経営層が戦略を立てていれば、末端はマニュアルの指示通りにさえ動いていればいい。
もし、スタッフにクソ野郎がいても、上の人の判断が正しければ、どうにでもなる。
しかし、物事の失敗は、判断する上の人たちの判断間違いのほうが原因としては大きい。
トップがどんな考えをもって、どんなビジョンを描いているのか。
それは一度、気にしておいたほうがいい。トップを監視しておいたり、直接聞ける立場なら聞くことだってひとつの手だ。
あるいは、まわりを見回してみよう。
トップが優秀だからといってラクしている人たちが多いなら、それはそれで少し焦っておいたほうがいい。
環境がいいおかげで、自分の実力以上の成果が出ることはよくある。それを自分の実力と勘違いしてしまうと、タチが悪い。
心の中で、「これは環境のおかげだ」と思うだけでいい。
それだけで、周囲の人たちから頭一つ抜きん出ることができる。