東京都の小池百合子知事が1月14日、都立広尾病院など3病院で新型コロナウイルス感染者の受け入れを拡大するため、広尾病院から転院が必要となる妊婦への財政支援などを打ち出した一件で、小池知事が実質的に率いる都議会最大会派「都民ファーストの会」の都議がツイッターなどで「会派の要望が実現した」とアピールしていた。ところが、都に要望書を提出したのは知事の表明後だったことが分かった。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
妊婦が不安を訴え注目された広尾病院
「都民ファが要望→知事表明」とアピール
「知事へ要望後すぐに項目全てにわたり検討、決定。大変な中、声を都民ファーストの会に届けて頂いた妊産婦の皆さんが居てこそ我々も小池百合子都知事に届けられました。出産頑張ってください!!応援しています。 #出産応援してます #がんばって」――。東京都議会で48人を擁する最大会派の「都民ファーストの会」代表の荒木千陽都議会議員は、1月14日午後11時50分、ツイッターに投稿した(下写真)。
都民ファを立ち上げ、現在は「特別顧問」の肩書を持つ小池百合子知事は同日午後2時ごろ、都庁で開催された第28回の「東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議」の終了後に、都立広尾病院のコロナ感染者の受け入れ拡大に伴って他病院への転院が必要になる妊婦に対し、追加で要する出産費用やタクシー代などの支援、転院先への医療情報の提供を行うと表明した。
広尾病院の妊婦を巡っては、妊婦自身が匿名で報道機関の取材に応じ、突然転院を求められて強い不安を感じていると訴え、1月13日にテレビなどで報じられた。
翌14日午前には、加藤勝信官房長官がこの件を質問され「必要な医療をどう提供していくかは、地域の中で役割分担を協議し、対応していただきたい。新型コロナの患者の受け入れに対しては支援措置を設けており、そうしたものを活用しながら転院を円滑に進めていただきたい」と述べていた。
小池知事の決断は、いかにも都民ファの要望が実ったようにも見えるが、事情は少し複雑だったようだ。