イー・アクセスを買収し、完全子会社化する――。10月1日、ソフトバンクの電撃発表に、携帯キャリアの関係者たちは仰天した。スマートフォンの本格的な普及により、キャリア各社のパワーバランスは変わりつつある。主要プレーヤーの実力が伯仲し、新勢力まで誕生した今、誰が勝者になり、誰が敗者になるのか、情勢が非常に読みづらいフェーズに突入した。果たして、市場の勢力図はどうなるのか。ソフトバンクとイー・アクセスの勝算を読み解きながら、「スマホ動乱時代」の行方を占う。(取材・文/岡 徳之、協力/プレスラボ)

多額の買収額と異例のスピード
勢力図を塗り替える決断の裏側

「イー・アクセスを経営統合し、完全子会社化する」

 10月1日、ソフトバンクの電撃発表に、携帯市場の関係者は仰天した。日本の携帯電話業界において、ソフトバンクは業界3位、イー・アクセスは業界4位のキャリア。まさに市場の勢力図を塗り替えそうな大買収劇である。

 買収レースには、ソフトバンク、楽天、KDDIの3社が名乗りを上げていたが、資金にモノを言わせたソフトバンクが高値で落札。イー・アクセスは2013年2月に子会社化されるが、イー・モバイルのブランドは存続する。

 これによりソフトバンクは、子会社のソフトバンクモバイル、ウィルコム、イー・モバイルという3つの携帯電話ブランドを傘下に持ち、携帯市場で一大勢力を形成することになった。

 今回の買収の経緯を見ると、ソフトバンクがイー・アクセスをいかに欲しがっていたかがよくわかる。買収は株式交換によって行なわれ、買収総額は1800億円、実にイー・アクセスの時価総額の3倍近くに上った。

 また、買収までのスピードも異例だった。9月28日のソフトバンク取締役会、10月1日のイー・アクセス取締役会を通じて、買収が本格交渉に入って決定するまでに、わずか約1週間という早さである。

 ソフトバンクが、携帯市場で競合するイー・アクセスにそこまで魅力を感じていたのはなぜか。背景には、群雄割拠の携帯市場で起きている覇権争いの構図が見える。

 現在、携帯キャリアの勢力図は、スマートフォンの本格的な普及により、変わりつつある。とりわけ各社のパワーバランスに影響を与えているのが、日本で圧倒的な人気を誇る米アップル社製の「iPhone」である。