写真:京都の茶園京都の茶園で、筆者(右)と訪れたラビ (筆者提供)

「コーシャ認証」という加工食品に対するユダヤ教の認可がある。この認証を日本でも徐々に取得する動きが広がっている。「コーシャ認証」のルールと日本の加工食品が取得する意義について、解説する。(イスラエル国立ヘブライ大学大学院・総合商社休職中社員 徳永勇樹)

ユダヤ教の高僧(ラビ)が審査する
コーシャ認証

「ハロウィン仮装の人らが来はりますけど、気にせんとってください」――。

 ユダヤ教の高僧(ラビ)を畑に招くにあたり、オーナーは「(ラビの方々には)失礼かな?」と思いつつも、あえて近所の人々の「戸惑い」を防ぐために、そう説明したという。確かに、日本人にとって「郷愁の景色」ともいえる茶畑にあって、2つの黒い山高帽は異彩を放っていた。

 2020年10月末、京都府の茶園で行われていたのは、コーシャ認証取得の実地検査である。コーシャ認証とは、ユダヤ教の食事規定に従った加工食品に与えられる宗教上の認可だ。イスラエルの大学院でコーシャ認証をテーマに修士論文執筆中の筆者は、ラビの厚意もあって審査の場に居合わせることができた。おもむろに生の茶葉をほおばったラビの物思いの横顔と、オーナーの緊張した面持ちの間に私は立っていた。