インド洋に浮かぶ島国セーシェルに先月、インド海軍の飛行機が降り立つと、駐機場で外相ら閣僚がその貴重な貨物を出迎えた。インドで製造された英製薬大手アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチン5万回分だ。その2週間前には、中国で製造された中国医薬集団(シノファーム)のコロナワクチン5万回分が人口9万8000人のセーシェルに届いていた。中国は戦略的な観点から、長らくインドの影響下にあるとみられていたこれらの地域に進出することを狙っている。各国がソフトパワーによる影響力を競い合う中、コロナワクチンは世界的に重要な外交上の「通貨」となりつつある。中国とロシアは欧米の製薬会社と同様に、国産ワクチンを売り込んでいる。