ブロンコスはまさに手探りで開幕戦に臨みました。コロナ禍で試合ができるかどうかぎりぎりまで不明でしたし、できたとしても、どれだけの来場者があるかも分かりませんでした。スタッフをどれだけ雇えばいいかも分からず、全てをミニマムサイズで進めるしかありません。私自身、ジャージを着て会場に入り、設営作業をし、その後駐車場の片隅でスーツに着替えて試合に臨み、グッズ売り場にも立ち、試合終了後は再びジャージに着替えて、撤去作業とごみの片付けをしました。
運営では手はずの悪さが目立ちました。チケットを二重に配布したり、スムーズな対応ができなかったりと、来てくださったお客さまにはおわびの言葉もありません。
そんな開幕戦でしたが、これからの糧として最低限必要な“収穫”だけはできました。お客さまの顔を初めてじかに見て、対話して、顧客層を感じ取ることができたことです。これは当初の目的だったともいえます。集客のための広告宣伝活動をまったくしなかったにもかかわらず、会場はほぼ満員(最大席数の50%)になりましたが、ひと目見て分かったのは、年齢層が高めだったことでした。40代から60代の男性がかなり多かったのではないでしょうか。旧ブロンコスが地元で人気を集めていたのは15年から20年ほど前のことです。おそらく、会場に足を運んでくださった方の多くは、その当時からの「バスケットボールそのもののファン」ではないかと思われます。その人たちが、新生ブロンコスの様子を見に来てくれたわけです。
本来スポーツの、とりわけバスケの興行は若者や女性をメインに、20代から40代の顧客層をいかに多く集められるかに懸かっています。子どもの存在も重要です。そう考えれば、バスケの興行としてブロンコスの顧客基盤はまったくできていないと断言してもいいと思っています。
負けを覚悟したマーケティング

しかし、それによってブロンコスが取り組むべきこととマーケティングの方向性が明確になりました。言うまでもなく、コロナ禍が続く現在は、新規の顧客を開拓するには適した時期ではありません。今回の試合会場の様子を見て、今は既存顧客、バスケファン、バスケに目の肥えた層との関係を深めるフェーズだと、私は確信しました。B1とB3は明らかに違うものです。B3の、ブロンコスならではのバスケとチームづくり。それを軸としたマーケティングの方が、既存顧客の多くの方々に楽しんでもらえる可能性があることを理解した開幕戦でした。新規の若い顧客層を集めるのは来季以降だ!と割り切れば、イベント性は必要ではなくなります。つまり、派手なハーフタイムショーなどを含めた演出に体力と資金を割かなくていいわけです。
総花的なさまざまな演出やエンターテインメントなどはまだ必要なフェーズではなく、今必要なことは、実はスポーツビジネスの世界にいる人々にとってやりたくてもできない、「本当に最初からのチームづくり」です。そんな一丁目一番地ができる激レアケース。実はスポーツの世界で一番楽しいことです。このやるべきことが明確になったことは大きな収穫でした。