「コロナショック」後の原油価格上昇に、金融政策はどう影響しているかPhoto:PIXTA

ドル指数動向と
WTIの逆相関性

 商品価格の上昇が続いている。商品価格は基本的に、現物の需要と供給のバランスを背景に期待需要(実需を伴わない投機の需要、仮需)が相乗りする形で価格が形成される。つまり、価格動向を決める最も重要な要素は需要と供給のバランスであり、それを考慮した上で投機筋がポジションを形成するのが通常である。

 例えば、ニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されている原油先物のWTIに関する投機取引のシェア推移を見ると、足元は30%程度にすぎず、圧倒的に実需動向が価格を左右している。

 しかし、商品価格動向に対して、金融緩和などのファイナンシャルな要因が実需以上に大きな影響を及ぼすことがある。一般に株式市場で言われる金融相場に該当するもので、これは特にリーマンショック後に顕在化した。

 現在の原油を含む商品市場も、コロナ禍の影響による経済崩壊を回避するために世界的金融・財政による経済支援が行われており、リーマンショック後と類似した金融相場となっている可能性がある。

 現在の商品価格上昇は、需給ファンダメンタルズによるものか、それとも、金融政策の影響によるものなのか。リーマンショック後の中央銀行のオペレーションと、商品価格動向を比較して検証してみたい。

 まず、リーマンショック以降の米金融政策とイベントを振り返り、6つのステージに分類した。

(1)リーマンショック発生(2008年9月15日)
(2)FRBによる量的緩和開始(QE1:2008年11月~2010年6月、QE2:2010年11月~2011年6月、QE3:2012年9月~2014年10月)
(3)バーナンキ元FRB議長によるテーパリング(量的緩和の縮小)開始示唆(2013年5月22日)
(4)テーパリング開始~終了(2014年1月~2014年10月)
(5)利上げ準備期間(2014年10月~2015年12月15日)
(6)利上げ開始(2015年12月16日)