注目の戦略コンセプト、「リバース・イノベーション」の入門編の連載第7回。今回は世界的ベストセラーである『リバース・イノベーション』の著者で、コンセプトの生みの親でもあるビジャイ・ゴビンダラジャンによるコラムの翻訳です。

ゴビンダラジャンは、300ドル(約2万4000円)という信じられない超低価格の住宅をつくるプロジェクトを牽引していることでも注目されていますが、その設計思想には、リバース・イノベーションの考え方が随所に生かされ、画期的なビジネス・ソリューションとしての可能性が示唆されています。「300ドルハウスのビジネスへの挑戦」という原題です。

タタが仕掛けた約5万円の
超低価格プレハブ住宅

 インドの超低価格車「タタ・ナノ」を発売したことで知られるタタ・グループが2011年、インド農村部向けに設計された超低価格のフラットパック(平らに梱包された)の家を発売すると発表した。

 基本モデルは、現場で組み立てる20平方メートルのプレハブ方式のキットで、価格は500ユーロ(5万円強)である。ほかに、700ユーロ(7万円強)の一回り大きなモデルも用意されている(屋根の上にソーラーパネルをつける設計案もある)。

 すでにインド各地の30カ所でプロトタイプのテストが始まっていて、年末には各パンチャーヤト(農村部自治体)からテストの結果が報告されることになっている。

 先月、同じくインド企業のマヒンドラ・アンド・マヒンドラのチームが、「300ドルハウス」のオープン・デザイン・チャレンジで企業賞を獲得した。私たちが貧困者向けの設計に対する関心を高めるために、クリエーターを対象とするコラボレーション・プラットフォームであるJovoto.comと、そのスポンサーであるインガーソル・ランド社の支援により、グローバル・オンライン・コンテストを行ったところ、なんと300件もエントリーがあった。

 同チームは空き時間を利用して、インド農村部向けにも300ドルの家を設計した。チームは現在、シニア・マネジャーの激励のもとで、自分たちが設計したモデルのテストに取り組んでいる。