コロナで突然変わってしまった世界は、幼い子をもつ親にとっていっそう大変な状況をうみだしました。かつてなく長い時間、親子が家庭の中に閉じ込められる事態となったのです。しかし逆に難しい時期だからこそ、しっかり子どもを学ばせたい、心豊かに遊ばせたい、家族の絆を強めたいと前向きに考える親が多いことも明らかになりました。自身がモンテッソーリ教育で育ち、わが子を自宅で教育する人気子育てコーチである著者がコロナでロックダウンしたロンドンで緊急出版した『モンテッソーリ式 おうち子育て』(エロイーズ・リックマン著、山内めぐみ訳、ダイヤモンド社刊)は、そんなパパ・ママの支えとなり、イギリスでベストセラーになりました。モンテッソーリ、シュタイナー、非暴力コミュニケーション(NVC)など、注目の子育てメソッドを取り込み、おうちでの子育てをストレスフリーに楽しむための方法を、同書から抜粋します。学びを遊びの中に埋め込み、そして楽しい遊びから学んでいける豊富なアイデアの中から、子どもの失敗や問題行動を肯定的にとらえて語りかける方法を紹介します。

子どもが失敗した時photo: Adobe Stock

何をしても、いつでも特別な存在だと伝えることが大切です

 子どもですから、間違いも犯します。というより、失敗ばかりです。それでも、どんなにつらいときでも子どものよい面に目を向け続ければ、穏やかで愛に満ちたコミュニケーションの土台を築けます。

 では、具体的にはどうすればよいのでしょうか。もしも子どもが悪いこと(たとえば、きょうだいをぶった、など)をしたときは、このように対応してみてはどうでしょうか。

1 やってしまった行為よりも、子どもの気持ちに注目します。
「おもちゃを取られて、すごくいやだったんだね」

2 その行為を繰り返さないようやさしく止めます。
「叩きたい気持ちがなくなるまで、しばらく手を握っておくね。〇〇ちゃん(弟や妹)が痛いとかわいそうだからね」

3 愛情はたっぷりと注いで。
親として愛情を示すのがむずかしいときでも、子どもは愛と安らぎと安心感を強く求め、ぎゅっと抱きしめてもらいたがっています。「大好きだよ。イライラしてしまったのはよくわかるけど、もう乱暴してほしくないんだ」

 このやり方は心理学者のカール・ロジャーズが名づけた「無条件の肯定的配慮」という考え方に基づいています。相手が何を言おうとも、何をしようとも、肯定的に受け入れる気持ちを指します。セラピーではとても効果のある治療方法で、親子関係をよくするためにも活用できます。

 どんな子どもも、本来いい子だと考えましょう。子どもの行動は、どんなやり方だったにせよ、欲求を満たすために全力を尽くした結果だととらえます。そうすれば、子どもは強くて前向きな自尊心を育てられます。

 いつでも肯定的に子どもを受け入れ、子どもを変えようという意識を捨てて向き合えれば、子どもは安心して新しいことに挑戦し、失敗し、思い切って難題にも挑んでみようと思えます。子どもが何をしても、「大好きだよ」「大切に思っているよ」「いい子だね」と伝えましょう。

「無条件の肯定的配慮」こそ、パパとママが子どもにあげられる最高のプレゼントです。