そもそも、僕は大学では勉強らしい勉強をしていなかった。そのままなんとなく就職して、ぜんぜん仕事についていけず、メンタルが不調になって、ついには出社拒否症にまでなってしまったことについては、『やりたいことなんて、なくていい。』(PHP研究所)という本に書いた。
自分は何もできない、つらい、とずっと感じていた。順調に仕事を覚えていっている同期たちからは、3年くらい遅れている感じがした。
メンタルの不調をなんとか乗り越えて、仕事をしっかりとやっていこうと思ったのが27歳のとき。まずは勉強をしよう、と思ったが、本を読んでも何がなんだかさっぱりわからなかった。
書いてあることの意味がわからないというのではない。つまり、読めることは読める。でも、本を読んで、そこから何かを学ぶ、ということがわからなかった。本を自分の役に立てるためには、どんな頭の働かせ方をしたらいいのかわからない。だから、読み終わっても何も頭に残っていない。もちろん、自分が成長した感じもない。
本から学ぶのは無理だ。と、僕は明確に気づいた。
だったら、別の学び方をするしかない。
それは、人から聴くことだ。本を読むのと違って、人から教えてもらうことは学びになる、という実感があったから。
たとえば、仕事でわからないことがあったら先輩や上司に聞く。みんな親切に教えてくれる。「こんなことも知らないなんて、かわいそうなやつだ」と思ってくれたのかもしれない。
とにかく自分は、聞かないと学べなかった。人の話から学ぶことは大きい。それが僕の基本スタンスになった。本よりも人から聞いて学ぶこと、これがインプットとして重要だった。
でも、そうやって教えてもらえる時間はそう長くない。いつまでも何もできず、人に聞いてばかりだと相手にされなくなる。もっと教えてもらうためには、自分にできることで貢献しなければならない、ということにも気づいた。
おもしろいもので、人の話を聴き続けているうちに、しだいに本からも学べるようになった。それと同時に、20代の僕が本から学べなかった理由にも気づいた。
僕が本から学べなかったのは、その内容を文字通り「インプット」しようとしていたからだ。理解して、頭に入れたい。なんなら覚えよう、なんて考えていたからだ。
大学に入るまでの勉強、受験勉強なら、これでなんとかなる。実際、僕はすべての科目を「暗記」して受験を乗り切った。数学でさえ、「いい問題と解答」を300個くらいまる覚えしていたくらいだ。
でも、社会に出たら丸暗記ではどうにもならないのは当たり前。本を読んでも、何も頭に残らなかったのも無理はない。