外国人は妖怪じゃないのに…ヘブン(トミー・バストウ)ついに来日!おトキが本能的に感じた“違和感”〈ばけばけ第21回〉『ばけばけ』第21回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第21回(2025年10月27日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)

トキ22歳、働けど働けど…

 ヘブン(トミー・バストウ)が松江にやって来た!

 第5週「ワタシ、ヘブン。マツエ、モ、ヘブン。」(演出:村橋直樹)はいよいよ本格的な『ばけばけ』のはじまりを感じさせた。朝ドラではたいてい、子役時代が序章で、成人して本役になってからが第1章という印象があるのだが、『ばけばけ』に関してはヘブンの登場からを第1章と考えたい。というのはタイトルバックがトキとヘブンの2ショットだからだ。

 アヴァン(オープニング前の導入部分)では念入りにこれまでの回想が流れた。トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)の子ども時代、明治維新で家が没落し、借金まみれ、トキが遊郭に売られそうになり、働き始めた雨清水の織物工場は倒産、失業して夫・銀二郎(寛一郎)とは涙のお別れ……。

 こんなふうになんやかんやあって、トキは22歳。現在はしじみ売りで生計を立てている。

 しじみを売りに行った先の花田旅館の女将ツル(池谷のぶえ)に「こげにはたらいて私しゃ銀二郎かーーい!」とトキは嘆く。元夫のことをいまだに引きずっているのだ。それもそのはず、離婚した過去があるため次の縁談が決まらないのだった。

 令和では決してそんなことを言ってはならないが、昔は離婚すると傷ものみたいに言われていたことがあった。まるで反物に傷がつくと売り物にならないとはぶかれるように。「出戻り」などと言われて偏見の目を向けられていた。ひどい話である。ただ、トキの場合は婿だったので出戻ってはいない。

 働けど働けど借金はなくならず、再婚して働き手を増やすこともできない。わりと詰んでいる松野家である。そこに朗報が。