スシロー回転寿司チェーン「スシロー」はなぜコロナ禍でも強いのか Photo:Diamond

コロナ禍でも過去最高の売り上げを記録
スシローの原動力は過去の経営改革にあり

 回転寿司チェーン「スシロー」の売り上げが好調だ。「スシロー」を展開するあきんどスシローを傘下に有する株式会社スシローグローバルホールディングスは、2020年9月期の売上高が2049億5700万円(対前期比2.9%増)と、コロナ禍においてなお過去最高を記録。直近ではテイクアウト専門店を出店し、自社デリバリーサービスを強化する方針に加えて吉野家から京樽の買収も行い、攻めの姿勢を崩すことがない。

 コロナ禍においても好調を維持する同社は、主力商品がテイクアウトに向くこと、回転ベルトやタッチパネルなど高生産性の非接触システムの導入、寿司に加え揚げ物、汁ものなど豊富なメニューによる多様な客層の取り込みなど、「パンデミックを見据えた準備をしてきたのではないか」と思えるほど、コロナ対策との相性がよい。

 しかし、それは結果論である。今でこそ飛ぶ鳥を落とす勢いのスシローだが、その歴史を紐解くと、紆余曲折があった。特に、2003年に上場した後、2009年に非上場化し、2017年に再上場するまでの8年間は、経営体制も大幅に変わっている。組織にいる従業員が大変な苦労を味わってきたことは想像に難くない。

 実は著者は、約10年前となる2009年から2011年まで、PEファンド・ユニゾンキャピタル傘下のあきんどスシロー社を、エグゼクティブアドバイザーとして経営支援した。当時は黒子的な存在として同社をバックアックしたわけだが、その様子は書籍や当時のテレビ番組でも多く取り上げられた。

 公開情報を基に当時の経営改革を10年ぶりに再検証することで、それがいかに現在の好調につながっているかを振り返りたい。コロナ禍に苦しむ飲食業界がニューノーマルの社会で生き残っていくためのヒントを、2回にわたって考えていきたいと思う。

【経営改革1】
守備固めのリスク対策
「プロジェクトゼロ」の先見性

 当時の経営陣は、経営改革をするにあたって、筆者が支援に参画した直後、まずは守備固めを行った。プロジェクト名は「プロジェクトゼロ」。当時、業界2位だった同社は、業界1位になると世間の風当たりが強くなることを見越して、リスク対策を非常に重視した。

 守秘義務があるため詳細は記載できないが、労務管理、衛生管理、顧客管理など、それまでの外食業においては大手においても軽視されがちな領域に踏み込み、他業界では当たり前の水準を目指してコストをかけて着手した。「業界の常識は世間の非常識」、という難題に取り組んだことが、スシロー躍進物語の序章だと思う。