6 病人と医者

 中国は病人で、日本は医者である。この医者は善意であるが、病人の言い分を聞くことなしに、独り合点して頻りに薬を盛ること、既に十四年に及んだ。ただし、病状は何ら快方にむかわないばかりか、むしろ悪化の傾向がある。名医は宜しく慎重に病因を診察し、病人の話を聞き、しかるのち、自信ある処方に基づき、薬をあんばいすべきである。出たとこ勝負の治療では、この重病人は治りそうにもない。

(中略)

10 「引」と「押」

 日本人は引き、中国人は押す。戸、鋸、車、みなしかりである。
馬や牛にしても、日本人は綱をつけて前から引っ張り、中国人は綱もつけずに、後ろから追ってゆく。人に対しても同じである。野に隠れた賢人、義人も劉備の孔明に対したように、三顧の礼でもって押し出さなければ絶対出てこない。

 ところが、日本人は司令部か役所に傲然と座って呼び出そうとするから、出てくるのは野心家か発財家である。

 軍隊でも日本では陣頭指揮で、隊長が先頭に飛び込むが、中国では後ろから督戦する。対華新方針で従来日本側が「指導」と称して引っ張ってきたのを「支援」として押すように変更されたのは、よく中国国民性に適した政策と考えられる。

戦時中でも驚くほど
豊かだった皇室の国際感覚

 この文章は時折、一部が報道されてはいました。しかし、中国に赴任する官僚が、みんな絶対にこれを読んでおくべきと思って読んでいるという噂を聞いて、全文を手に入れ、増刊号に掲載しました。

 当時の日本人は「愛国心」という偏狭なナショナリズムに浮かされていました。皇室のこの余裕のある見方こそ、国際感覚というべきでしょう。