文芸春秋に入社して2018年に退社するまで40年間。『週刊文春』『文芸春秋』編集長を務め、週刊誌報道の一線に身を置いてきた筆者が語る「あの事件の舞台裏」。小泉純一郎と安倍晋三、2人の首相はまるっきり違いました。(元週刊文春編集長、岐阜女子大学副学長 木俣正剛)

「歴史小説好き」の小泉首相に、「朝日新聞嫌い」の安倍首相。2人のメディア戦略はまるっきり違った Photo:Tatsuyuki TAYAMA/gettyimages

不倫より政治家への
問題提起こそ
メディアの使命

 雑誌編集者が政治家に直接取材したり酒席をともにしたりするようになったのは、中曽根政権以降です。私が入社したころは、大手報道機関の政治記者に話を聞いて原稿を書くことが中心で、政治家からは雑誌記者など無視されていました。

 党内基盤が弱く、田中派や大平派と組まないと政権を維持できなかった中曽根政権になってから、新聞やテレビを牽制するためもあって、より長い文章でプレゼンできる『文芸春秋』に政治家が登場するようになりました。政治家たちの雑誌重視は、中曽根総理が最初でした。

 その後、週刊誌どころか女性誌までに登場するメディア戦略の持ち主、小泉純一郎政権になって、若い雑誌記者でも平気で政治家と直接会える状況になりました。一方、政治家のスキャンダル記事を書く機会は、新聞・テレビに比べて雑誌が格段に多くなりました。

 私が週刊誌編集長をしていた2000年から2004年は、小泉政権でした。5年続いたこの政権で、記事によって地位を失った閣僚クラスの大物議員は5人。そのうち、4人が週刊文春の報道による辞任でした。

 田中真紀子外務大臣(秘書給与疑惑で辞任)、山崎拓幹事長(愛人問題で落選)、大島理森農林水産大臣(秘書の口利き疑惑・辞任)、福田康夫官房長官(年金未納問題・辞任)。そして、島村宜伸農林水産大臣のみ郵政民営化に反対して罷免――。

 第2次安倍政権での辞任は、初期はほとんどが放言、失言問題でしたが、終盤は次々と文春が問題提起して政治家を辞任に追い込んでいたことを考えると、近年、雑誌が向かっている方向が正しいものになりつつあるように思います。やはり、不倫より政治家への問題提起こそ、メディアにとって重要なことではないでしょうか。