主人公・美桜が自分の殻を破るシーン
編集者 ほかには、美桜ちゃん一家がお寿司屋さんに行くストーリーも良かったですね。家族の結束が深まる感じもありました。
百田 あれは大きく物語が動く回でしたね。
渡辺 前著『話すチカラ』で安住さんが、お寿司屋さんを例に出している箇所があって、そこに着想を得て書きました。このストーリーでは美桜ちゃんがお寿司屋さんの大将に自分から話しかけることで、引っ込み思案の殻を破る場面が出てきます。
「自分の感情を相手に伝えることが大事」というのは、私自身が『話すチカラ』から受けとった重要なメッセージの一つでもあったので、やっぱり思い入れの強いシーンですね。
特に今のようなコロナ禍で人と人とがなかなか合えないときだからこそ、素直に感情を伝えることって大事なんだな、とあらためて実感しています。
編集者 安住さんも、美桜ちゃんの行動に「すばらしいご覚悟です。こういう人は就職試験でどこでも通ります!」とコメントされていました。
渡辺 もともとは、安住さんの教えなんです。とにかく私自身も勇気づけられる内容だったと思います。
編集者 最後に美桜ちゃんが卒業するときのシーンも感動しました。齋藤先生と安住さんが彼女を応援して送り出す。その「自分にもできそう」と背中を後押ししてくれる感じがよく伝わってきましたし、本書のメッセージを象徴しているように感じました。
百田 私自身、美桜ちゃんを一生懸命応援したくなる子にしたいという思いがあって、そこは終始意識した点です。