――こだわっている分、それなりにお値段が張りそうですが?
後藤 そこまで高くはありません。平均価格は1万2800〜1万3800円で、1万円を切るものもあります。
――なぜそんなに安くできるのですか?
後藤 一つは在庫ロスを最小限にするようコントロールしているからです。会員の購買情報や実店舗で得られるお客さまの声、他社製品の売り上げ動向などから、売り切れる価格設定や数を、綿密に計算しています。
また、生産計画を早めに立てて工場を早く押さえることで、生産コストを抑えています。社員やスタッフも少数精鋭です。
――靴の業界を知り尽くしているご様子ですが、この業界は長いのですか?
後藤 いいえ、元は印刷機械などBtoBの営業をしていて、靴業界は、前職で靴問屋の営業を2年間していたのみです。そのときに、よい商材を持っているのに新たな販路開拓に消極的なのを見て、もったいないと思い、独立して挑戦しようと考えたのです。
工場も販路も、前職のコネクションは使えないので、一から開拓しました。販路は展示会で探しました。日本製の革靴メーカーが弊社だけという展示会で、百貨店や通販のバイヤーに出会うことができ、道が開けましたね。
今では多岐にわたる販路を持っているので、「実店舗で売れた製品を通販会社に提案する」といったこともできる。その情報力も弊社の強みになっています。
――短期間での成長もうなずけました。
後藤 成長の要因の一つに、いちい信用金庫さんから信用保証協会を通さないプロパー融資をしていただけたことも大きかったです。日頃お世話になっているので、起業家向けセミナーでの講演を頼まれたときはお受けし、販路開拓についてお話しいたします。
――今後の抱負を教えてください。
●株式会社ワン・イレブン 事業内容/靴の企画、デザイン、製造、卸売り、小売り、輸入および修理、従業員数/10人、売上高/1億7500万円(2020年度)、所在地/愛知県北名古屋市沖村西ノ郷110、電話/0568-54-3393、URL/one-eleven111.com
後藤 現在はBtoBの取引が売り上げの85%に上るので、BtoCの取引を増やしたいですね。常設店舗を東京や大阪にも出店するために、百貨店のポップアップストアで実績づくりをしています。
最近、台湾の通販会社からもオファーが来ました。アジア圏の人々は足型が日本人と似ているのでチャンスがあると考えています。海外のお客さまにも弊社のコンフォートシューズをご愛用いただけるとうれしいですね。
(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2021年3月号掲載、協力 いちい信用金庫)