P.F.ドラッカーは「マネジメントの父」と呼ばれ、著した数多のマネジメント書は、多くの信奉者を擁する。しかし、一方で「読むと眠くなる。難解な文章だ」と言った声も多く聞かれる。手に取ってみたものの挫折したという方は多いのではないだろうか? ドラッカーの書籍を読み解くためには、まずドラッカーマネジメントの骨格にあたる部分を理解する必要がある。そのエッセンスと、骨格にあたる「5つの質問」とを理解して、混迷する「VUCA」時代の経営の羅針盤としてドラッカーマネジメントを活用しよう。(ドラッカー塾(R) 今給黎健一)
「マネジメントの父」と呼ばれるP.F.ドラッカー氏が、2005年11月11日に没してから15年が経とうとしている。その間にも2009年発行の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海著)が270万部を超える大ベストセラーとなって読者の世代を広げるなどし、いまもなおドラッカーマネジメントの信奉者は多い。
マネジメントの基本と原則を体系的に明かした著書は40冊以上にのぼり、その内容は、おそらく数百年後も読み継がれるであろう。しかし、40冊もの本を読み込んで、体系的に理解することは、凡人にはなかなか難しい。私もドラッカー教授の個々の書籍には深く感銘を受けるが、それが体系的に書かれているなど思いもしなかった。
ダイヤモンド社は、P.F.ドラッカーから公式に許諾を受けた経営者研修プログラム「ドラッカー塾(R)」を主宰している。ドラッカーが明らかにしたマネジメントの基本と原則を、体系的に学ぶものだ。これまで、マネジメントを学ぶものと考えず、経験と勘に頼っていた受講者は、ドラッカーマネジメントを体系的に理解して、「もっと早く知っていれば、人生が変わっていた」と異口同音に語る。この連載では、ドラッカー塾(R)でお伝えしている内容をかいつまんでお話ししよう。
“マネジメントの父”であるドラッカーが唱えた経営とは?
「マネジメントの父」と呼ばれるドラッカー教授は、その著作を斜め読みした程度の人たちからは、欧米型の株主資本主義をベースとする経営学者ではないかと勘違いされている。大きな勘違いである。ドラッカー教授の思想の根底には、人を大切にする心がある。人間が人間らしく真の自由な状態でいられることに強く関心を持っていたのだ。