「国家資本主義体制」の強化で
米国に対抗する中国

 中国の共産党政権は、米国からの批判や圧力に対して弱腰になることはできない。共産党指導部が恐れるのは、国内の社会心理の悪化だ。

 1989年に天安門事件が発生した時、西側の経済の専門家の多くが「これで中国は民主主義に向かい、自由資本主義陣営への仲間入りを目指す」と考えた。

 しかし、そうはならなかった。中国共産党指導部は経済運営の指針を定め、海外からの技術移転や金融市場の育成によって工業化、および先端分野への生産要素の再配分を進めて経済成長を実現した。

 つまり、中国共産党政権は「党に従えば豊かになれる」というイデオロギーを社会心理に根付かせることによって、求心力を発揮したのである。コロナショック後の中国経済の回復スピードの早さは、こうした国家主導による経済運営体制の強さを世界に示したといえる。

 ただ、景気回復の一方で、中国では人口減少と雇用への不安が高まっている。

 共産党政権は、中長期的な経済運営への不安、あるいは焦りを強めているだろう。長期の支配体制を目指す習近平国家主席は、より強固に米国に対抗し、強さを誇示しなければならない。フィリピン海域への約220隻の中国船籍の集結や、人権問題をめぐるEUへの対抗措置はその一例だ。

 経済運営に関して、求心力維持のために、共産党政権は経済成長を実現しなければならない。

 そのため共産党政権は、国内では高速鉄道や道路の延伸などのインフラ投資に加え、産業補助金や海外企業からの技術の強制移転を進める。インフラ投資の結果として、債務問題は深刻化するだろう。

 対外的には、「一帯一路」や「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」に基づき、アジア・アフリカ新興国各国との関係を強化し、需要の取り込みを目指す。それは中国にとって、経済成長だけでなく、国際社会における孤立回避にも重要なのである。

米中の対立が激化する中
日本が取るべき2つの対応

 今後、米中の対立は激化するだろう。短期的に、中国経済は成長を実現し、その恩恵に浴したい国や企業は増えていくだろう。ただし、長期の視点で考えると、中国経済の不安定感は高まる可能性がある。特に債務問題は軽視できない。

 米国はそうした長期の展開を念頭に、対中政策を進めようとしているようにみえる。中国の最先端の製造技術は十分ではない。そのような中国の弱みをたたくため、まずはジーナ・レモンド米商務長官とキャサリン・タイ米通商代表部(USTR)代表は、トランプ前政権の対中禁輸措置や制裁関税などを継続する。半導体関連に加えて、気候問題への対応に必要な水素や脱炭素関連の分野でも、米国は同盟国と連携し、中国に対する関税・非関税障壁を強化する可能性がある。

 次に米国政府は、補助金などを用いて自国企業の競争力を高めたい。3月23日には米インテルが200億ドル(約2.2兆円)を投じて、アリゾナ州に工場を建設すると発表。同社は、半導体の受託製造(ファウンドリー)事業にも参入する。それは、バイデン政権が目指す、米国の半導体生産能力強化への取り組みに従ったものだ。アリゾナ州には台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company/台湾積体電路製造)も工場を建設する。それがインテルの競争力にどう影響するかが注目される。

 ポイントは、中国の国家資本主義との覇権争いの長期化に備え、米国経済における「政府の役割」が増すことだ。先端分野を中心に、米国の自由資本主義体制には変化が生じているといえる。

 米中の対立が激化し、その影響が長期にわたって続く展開が予想される中、わが国が取るべき対応は2つだ。

 一つ目は、安全保障面で米国との関係を強固にすること。ニつ目は、先端分野での技術開発をスピード感を持って進めて、米中双方から必要とされる立場を目指すこと。こうした対応が、わが国が中国に是々非々の姿勢で臨むことを支え、国際世論からの信頼を獲得することにつながるだろう。