「32時間の列車移動」が中国で話題のワケ

 このニュースは中国のSNSでも報じられた。しかし、中国の国営メディアや中国共産党機関紙など官製報道では確認されず、国内団体や香港、シンガポールなどのアカウントがニュース投稿している。

 実は、中国は国内への影響を考慮して、北朝鮮情勢が不安定だと受け取られるようなニュースには神経をとがらせている。そのため、官製報道では伝えなかったとみられる。その一方で、中国は新型コロナウイルスに打ち勝って、すでに正常化させているとの「新型コロナへの勝利」を国内へ強くアピールしたいので、他のアカウントからの投稿は、実質的に容認して残したと考えられる。

中朝国際列車の寝台車

 中国のSNS微博(ウェイボー)へ書き込まれたコメントで“中国当局から整理されなかった”ものを見ると、「32時間!」「(北)朝鮮はどれだけ広いの?」「平壌からロシア国境まで何km?」など、32時間列車移動への驚きの反応が多かった。

 中国も2007年に高速鉄道が開業するまでは、24時間乗車や夜行列車は当たり前だった。開業後は多くの死傷者を出した重大事故が相次いだが、中国政府が早期の事態収束を図って詳細な調査はせず高速鉄道網を全土へ延伸したことで、特に中国の若い世代には、丸一日以上の鉄道乗車は、もはや異次元の世界なのだろう。

 もっとも日本でも32時間もローカル線に連続乗車することはないだろうが、この32時間は、コロナ禍での異常事態ではない。コロナ前の平時でも元々30時間以上かかる路線なのだ。

 中国の旅行代理店によると、平壌駅から羅津(ラジン)駅までの国内列車は、午前7時50分発、翌日午後2時30分着と30時間40分が標準時刻となっている。しかも、遅延することが多く、実際には、さらに数時間余計にかかることが日常茶飯事だそうだ。つまり、32時間は平常に近い乗車時間だったということだ。

 平壌から羅津駅がある羅先(ラソン)特別市まで約820km。羅先中心部からロシアとの国境駅である豆満江駅まで自動車で40分ほどかかる。外交官一家は2時間バスに揺られたとあるので、羅津駅の手前で下車してバスへ乗り換えたとみられる。

 豆満江(トマンガン)駅からロシアのハサン駅まで約5km。ロ朝国境を隔てる豆満江にロシアが建設した露朝友情橋が架かる。この鉄橋はおよそ400mなので、1kmほどトロッコを人力で押したというロシア外交官一家は、鉄橋の手前からトロッコへ乗り換えたと推測される。