本当に起きているかもしれない
『ゴルゴ13』のような話

「それこそゴルゴ13だよ、妄想乙」とせせら笑う声が聞こえてきそうだが、世界が大混乱に陥る中で、中国が「足りなくなったモノ」を武器に、世界のパワーバランスを塗り替えようと試みるというのは、「ワクチン外交」が証明している。

 分散している「敵」と対峙する場合、拠点を一つひとつ潰していくより、一箇所におびきだして集めて一網打尽にする方が、はるかに効率的だ。それと同じで、もし中国が半導体覇権を狙うなら、台湾が生産能力を極限まで高めたところで一気に叩いた方が、よりダメージが大きくなることは言うまでもない。

 事実、そんな「シナリオ」が頭をよぎってしまうような、奇妙なことが台湾で起きている。

『自由時報』などの台湾メディアによれば、3月31日、台湾北部新竹科学団地にあるTSMC第12工場で火災が発生し、停電状態となった。出火元は変電所で、「原因不明」だという。

 もちろん、世界の半導体生産が集中して現場が疲弊していることを踏まえれば、このようなトラブルが発生することもそれほどおかしなことではない。

 が、一方このタイミングで、台湾海峡でも中国とアメリカの緊張が高まっていることは、偶然にしてはでき過ぎではないか。

 3月9日にはアメリカの上院議会の公聴会で、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官が「6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と述べ、世界に衝撃が走った。そんな時期に世界のハイテク機器の生命線である半導体が、中国の侵攻場所に過剰なまでに集められているのだ。

 今から6年以内というと、習近平肝いりの産業政策「中国製造2025」では、《「製造強国」への仲間入りを果たす》という時期に当たる。台湾を手中に収めれば、当然この目標を達成できることは言うまでもない。

「中国が日本の半導体を狙うなんて、マンガもいいところだよなあ」と笑う人も多いが、「一帯一路構想」などを見れば、中国がもはや日本など眼中にないことは明らかだ。

 日本人が平和ボケしているだけで、世界では「ゴルゴ13」の世界のようなことがリアルに起きているのかもしれない。

(ノンフィクションライター 窪田順生)