わが国をはじめとする各国がコロナ危機に見舞われて、はや1年が経過した。繰り返す危機に国としていかに対応するか。その際、政府と中央銀行はどのような役割分担で危機対応を行うべきか。欧米各国とわが国との間では、同じ市場経済下にありながら、この点についての考え方に大きな違いがあることを、コロナ危機は改めてあからさまにする結果になった。連載最終回は、その違いが何をもたらすのかをみてみよう。
欧米主要国と大きく異なる
わが国の危機対応の考え方
2020年春以降、コロナ危機に瀕したわが国をはじめとする各国の政府は、急激な打撃を受けた人々の雇用の維持や企業の事業活動の継続に向けて、大規模な経済対策を講じた。その規模を主要先進国について比較すると(図表1参照)、わが国は追加歳出(歳入猶予を含む)の面でも、出資・貸出・保証の面でも、先進国平均を大きく上回る規模でコロナ対策を講じてきたことがわかる。
また、日銀をはじめとする主要中央銀行も、こうした政府の対応に足並みを揃える形で、2020年春先以降、危機対応の政策運営を展開してきた。国債等の買い入れ強化によって自国通貨建ての巨額の流動性を市中に供給してきたことに加え、特に同年春先から夏前にかけては、国際金融市場でひっ迫しているドル資金を、中央銀行間でのスワップ取引(米Fedからドル資金を自国通貨建て資金と交換する形で各国中銀が借り入れ)を基に大規模に供給するオペレーションも行われた。
さらに社債等の買い入れや、国によっては政府の後ろ盾を得て今回の危機対応策として特設された資金供給ファシリティを活用しての企業の資金繰り支援策も展開されてきた。