名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第38回。老舗の眼科専門病院の後継者として知られ、すべての人が使いやすく共生できる「ユニバーサルデザイン」を追求している井上賢治医師(井上眼科病院グループ理事長、井上眼科病院院長)紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
明治時代からつづく眼科
11代目の理想の病院とは
病院を訪れた際、目当ての診療科はどこか、検査を受けるにはどこへ行ったらいいのかなどで迷ったことはないだろうか。ただでさえ病気やケガはつらいのに、移動や待ち時間等でも困難を強いられるのはやるせない。まして、患っているのが目で、診察室の表示やフロア案内図を見つけるのさえ大変な状況だったらどうだろう。
「かつての当院は、狭い廊下に患者さんがあふれ、椅子に座れない方が立って待っているような、患者さんにとってストレスフルな施設でした。私はそれではいけないと、患者さんにとって病院は、少なくとも治療以外の事柄ではつらい思いをしたり迷ったりすることなく、安心して過ごせる場所であるべきだと考えました」